後列左からプリーバス首席補佐官、ナバロ氏、クシュナー上級顧問、ミラー補佐官、バノン首席戦略官(2017年初め当時)
https://images.wsj.net/im-49160
【ワシントン】トランプ米大統領は就任後初の財務省高官との会合で、中国を為替操作国に認定するとした選挙公約を早くも見直し始めていた。ホワイトハウス元高官の著書「チーム・オブ・バイパーズ」(毒ヘビチーム)で明らかになった。
来週出版されるこの新刊本によると、トランプ氏はスティーブン・ムニューシン財務長官の側近ダン・コワルスキー氏から、中国は人民元相場を操作していないと聞かされると「本当か」と、興味と驚きがないまぜになった表情で応じた。このことは多数のファクトチェッカー(事実を検証する人)が前年に警告済みだった。
コワルスキー氏はトランプ氏に、人民元についての理解が間違っていることを示す内部報告書があると話した。トランプ氏はムニューシン氏を見ながら「その報告書を読まなければならない」と語った。トランプ氏は就任82日目のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで方針転換を表明したが、経済データに基づく判断というより、戦略的判断だと位置づけた。
この著書以外にも数人の元ホワイトハウス高官がトランプ政権にまつわる著作を執筆しており、トランプ政権ものという新たな分野が急成長している。チーム・オブ・バイパーズは、選挙戦中と就任1年目の双方でトランプ氏に接する機会のあった数少ない側近の1人、クリフ・シムズ氏が執筆した。戦略メッセージ担当ディレクターだったシムズ氏は、昨年ホワイトハウスを去った。
シムズ氏はトランプ氏のホワイトハウスに入った多くの側近と同様に、型破りな経歴の持ち主だ。20代はロックバンドのリードボーカルで、アラバマ州の政治サイトを設立。その後トランプ陣営に入ったが、トランプ氏が昨年、税制改革案を発表すると、予期しなかった憂鬱(ゆううつ)に襲われたという。
シムズ氏は「自分のキャリアが30歳代初めにピークを迎えたという可能性が非常に現実味を帯びたと考えるのは奇妙なことだ」と書いた。
シムズ氏の本は元側近らの回顧録のように復讐心に満ちた内容ではなく、トランプ氏の大統領執務室での混沌とした意思決定プロセスの内幕を読者にのぞかせるものだ。
当時のジョン・ケリー大統領首席補佐官との初会合についての部分では、通商政策担当者が居並ぶ中、側近らの口論や言い逃れによってトランプ氏のもう1つの選挙公約が行き詰まった様子を描写した。
大統領執務室に入るのを待っている大統領補佐官(通商製造政策局長)のピーター・ナバロ氏は、トランプ氏に見せるために準備した図入りの大きなボードを手にしていたが、当時トランプ氏に提示する情報の選別役だったロブ・ポーター秘書官(当時)には隠そうとしていた。ナバロ氏はポーター氏に「大統領に真の事実でなく、あなたの考える事実を伝えたいのだろう」とかみついた。
会合ではスティーブ・バノン首席戦略官(当時)が、幅広い関税を盛り込まない方策を主張するゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長(当時)の後ろを行ったり来たりしていた。バノン氏はコーン氏の話をさえぎり、トランプ氏に「トランプ・プログラムを脱線させたい人もここにいる。それだけの根拠があるに違いない」と語った。
トランプ氏は側近らに「これがそんなに難しいことか。私には分からない」と話した。「関税だーー関税をかけたい!この部屋にいる天才諸君、誰か私に関税を提案してくれないか」
一方、ケリー氏はみるみるうちに苛立ちを募らせて、明確な政策提案がないとトランプ氏に謝罪し、会合を終わらせた。
ポーター氏は側近らを近くのミーティング室に招いたが、バノン氏はその会合に参加しなかった。会合はナバロ氏が大統領に嘘をついたと非難するコーエン氏の怒鳴り声で始まり、コーエン氏もナバロ氏に応酬した。
Wall Street Journal 2019年1月24日 06:28 JST
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【ワシントン】トランプ米大統領は就任後初の財務省高官との会合で、中国を為替操作国に認定するとした選挙公約を早くも見直し始めていた。ホワイトハウス元高官の著書「チーム・オブ・バイパーズ」(毒ヘビチーム)で明らかになった。
来週出版されるこの新刊本によると、トランプ氏はスティーブン・ムニューシン財務長官の側近ダン・コワルスキー氏から、中国は人民元相場を操作していないと聞かされると「本当か」と、興味と驚きがないまぜになった表情で応じた。このことは多数のファクトチェッカー(事実を検証する人)が前年に警告済みだった。
コワルスキー氏はトランプ氏に、人民元についての理解が間違っていることを示す内部報告書があると話した。トランプ氏はムニューシン氏を見ながら「その報告書を読まなければならない」と語った。トランプ氏は就任82日目のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで方針転換を表明したが、経済データに基づく判断というより、戦略的判断だと位置づけた。
この著書以外にも数人の元ホワイトハウス高官がトランプ政権にまつわる著作を執筆しており、トランプ政権ものという新たな分野が急成長している。チーム・オブ・バイパーズは、選挙戦中と就任1年目の双方でトランプ氏に接する機会のあった数少ない側近の1人、クリフ・シムズ氏が執筆した。戦略メッセージ担当ディレクターだったシムズ氏は、昨年ホワイトハウスを去った。
シムズ氏はトランプ氏のホワイトハウスに入った多くの側近と同様に、型破りな経歴の持ち主だ。20代はロックバンドのリードボーカルで、アラバマ州の政治サイトを設立。その後トランプ陣営に入ったが、トランプ氏が昨年、税制改革案を発表すると、予期しなかった憂鬱(ゆううつ)に襲われたという。
シムズ氏は「自分のキャリアが30歳代初めにピークを迎えたという可能性が非常に現実味を帯びたと考えるのは奇妙なことだ」と書いた。
シムズ氏の本は元側近らの回顧録のように復讐心に満ちた内容ではなく、トランプ氏の大統領執務室での混沌とした意思決定プロセスの内幕を読者にのぞかせるものだ。
当時のジョン・ケリー大統領首席補佐官との初会合についての部分では、通商政策担当者が居並ぶ中、側近らの口論や言い逃れによってトランプ氏のもう1つの選挙公約が行き詰まった様子を描写した。
大統領執務室に入るのを待っている大統領補佐官(通商製造政策局長)のピーター・ナバロ氏は、トランプ氏に見せるために準備した図入りの大きなボードを手にしていたが、当時トランプ氏に提示する情報の選別役だったロブ・ポーター秘書官(当時)には隠そうとしていた。ナバロ氏はポーター氏に「大統領に真の事実でなく、あなたの考える事実を伝えたいのだろう」とかみついた。
会合ではスティーブ・バノン首席戦略官(当時)が、幅広い関税を盛り込まない方策を主張するゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長(当時)の後ろを行ったり来たりしていた。バノン氏はコーン氏の話をさえぎり、トランプ氏に「トランプ・プログラムを脱線させたい人もここにいる。それだけの根拠があるに違いない」と語った。
トランプ氏は側近らに「これがそんなに難しいことか。私には分からない」と話した。「関税だーー関税をかけたい!この部屋にいる天才諸君、誰か私に関税を提案してくれないか」
一方、ケリー氏はみるみるうちに苛立ちを募らせて、明確な政策提案がないとトランプ氏に謝罪し、会合を終わらせた。
ポーター氏は側近らを近くのミーティング室に招いたが、バノン氏はその会合に参加しなかった。会合はナバロ氏が大統領に嘘をついたと非難するコーエン氏の怒鳴り声で始まり、コーエン氏もナバロ氏に応酬した。
Wall Street Journal 2019年1月24日 06:28 JST
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