週末の政治スレ
2018年12月09日 06時00分 読売新聞
◆社会への適応支援で不安解消を◆
外国人就労の門戸を大きく広げる制度改革である。解決すべき課題は多い。政府は必要な対策を講じて、円滑な導入と、国民の不安解消に努めなければならない。
改正出入国管理・難民認定法が成立した。新たな在留資格を設けて、人手不足が深刻な分野で就労を認めることが柱である。来年4月から施行する。
有効求人倍率は、バブル期並みの高い水準にあり、農業や建設現場は、人材確保に苦慮している。高齢者の入所を断らざるを得ない介護施設もある。
◆単純労働に新たな資格
女性や高齢者の就労拡大でも補えない以上、研究者ら高度な専門人材に限られていた就労目的の在留資格を、単純労働の分野にも広げることはやむを得ない。
日本で働いている外国人の4割は、技能実習生とアルバイトの留学生が占める。国際貢献や教育を名目に、安価な労働力として利用しているのが実情だ。
いびつな形で外国人労働者を増やすのは、限界がある。
政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。
新制度では、一定の日本語能力や就業分野の知識があれば、特定技能1号として最長5年間の在留が認められる。熟練した技能を持つ2号は、定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能となる。
政府は1号について、介護や建設など14業種を対象に、5年間で最大約34万人になると推計する。そのうち約45%は、技能実習生から移行すると見込んでいる。
技能実習を通じて、日本社会に適応した外国人が、長く働ける制度が整うことになる。
政府は近く、業種ごとの受け入れ見込み数を定める。外国人労働者を野放図に増やすことは、混乱を招きかねない。労働力不足が解消された場合には、速やかに受け入れを停止するなど、機動的に対応すべきである。
重要なのは、外国人労働者が能力を十分発揮できるよう、労働条件を整えることだ。
新制度が、受け入れ企業に、日本人と同等の報酬や福利厚生を確保するよう義務づけたのは、妥当な措置と言えよう。
◆技能実習是正が必要だ
外国人の給与水準が低ければ、日本人の賃金上昇を妨げ、雇用機会を奪うことになりかねない。
低賃金や不当な処遇を強要する企業に対しては、受け入れを停止させるなど、政府は制度を厳格に運用しなければならない。
新資格で入国した外国人労働者は、失業しても、同じ分野なら転職できる。帰国を余儀なくされた技能実習制度と異なり、生活の安定につながろう。
野党の追及により、技能実習制度の問題点が改めて浮き彫りになった。母国の悪質なブローカーに多額の借金を背負わされている実習生は少なくない。
送り出し国と連携し、実効性のある対策を打ち出すべきである。問題点を改めて洗い出し、是正策をまとめることが肝要だ。
外国人が日本社会に適応しやすい環境を整備することが、国民の不安の軽減につながる。
日本語教育をはじめ、生活相談や医療、住宅の提供など、きめ細かい支援が求められる。
国と自治体の役割を明確にし、効率的に進めてもらいたい。
在留管理を担うため、法務省入国管理局から格上げされる「出入国在留管理庁」の責任は重い。
外国人の出入国管理や、受け入れ企業への調査や指導を担う。約5400人に増員するとはいえ、厚生労働省や市区町村と密接に連携することが重要である。
法施行に先だって、政府は国会に、受け入れ分野ごとの運用方針や、外国人労働者に対する総合的な支援策などの全体像を提示する。多角的な観点から、与野党が妥当性を吟味すべきだ。
◆人口減対応の戦略描け
人口減少のペースは今後も加速する見通しだ。手立てを講じなければ、日本経済は縮小を余儀なくされよう。国際通貨基金(IMF)は、実質国内総生産(GDP)は今後40年で約25%減少する恐れがあると指摘している。
一連の国会審議は低調で、外国人労働者をどう位置付けるのかといった全体像についての論議が深まらなかったのは残念だ。
数十年先を見越し、経済や社会の活力をいかに維持するか。政府を挙げて、真剣に議論すべきだ。司令塔を明確にし、少子高齢化社会に対応した中長期的な戦略を描くことが大切である。
2018年12月09日 06時00分 読売新聞
◆社会への適応支援で不安解消を◆
外国人就労の門戸を大きく広げる制度改革である。解決すべき課題は多い。政府は必要な対策を講じて、円滑な導入と、国民の不安解消に努めなければならない。
改正出入国管理・難民認定法が成立した。新たな在留資格を設けて、人手不足が深刻な分野で就労を認めることが柱である。来年4月から施行する。
有効求人倍率は、バブル期並みの高い水準にあり、農業や建設現場は、人材確保に苦慮している。高齢者の入所を断らざるを得ない介護施設もある。
◆単純労働に新たな資格
女性や高齢者の就労拡大でも補えない以上、研究者ら高度な専門人材に限られていた就労目的の在留資格を、単純労働の分野にも広げることはやむを得ない。
日本で働いている外国人の4割は、技能実習生とアルバイトの留学生が占める。国際貢献や教育を名目に、安価な労働力として利用しているのが実情だ。
いびつな形で外国人労働者を増やすのは、限界がある。
政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。
新制度では、一定の日本語能力や就業分野の知識があれば、特定技能1号として最長5年間の在留が認められる。熟練した技能を持つ2号は、定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能となる。
政府は1号について、介護や建設など14業種を対象に、5年間で最大約34万人になると推計する。そのうち約45%は、技能実習生から移行すると見込んでいる。
技能実習を通じて、日本社会に適応した外国人が、長く働ける制度が整うことになる。
政府は近く、業種ごとの受け入れ見込み数を定める。外国人労働者を野放図に増やすことは、混乱を招きかねない。労働力不足が解消された場合には、速やかに受け入れを停止するなど、機動的に対応すべきである。
重要なのは、外国人労働者が能力を十分発揮できるよう、労働条件を整えることだ。
新制度が、受け入れ企業に、日本人と同等の報酬や福利厚生を確保するよう義務づけたのは、妥当な措置と言えよう。
◆技能実習是正が必要だ
外国人の給与水準が低ければ、日本人の賃金上昇を妨げ、雇用機会を奪うことになりかねない。
低賃金や不当な処遇を強要する企業に対しては、受け入れを停止させるなど、政府は制度を厳格に運用しなければならない。
新資格で入国した外国人労働者は、失業しても、同じ分野なら転職できる。帰国を余儀なくされた技能実習制度と異なり、生活の安定につながろう。
野党の追及により、技能実習制度の問題点が改めて浮き彫りになった。母国の悪質なブローカーに多額の借金を背負わされている実習生は少なくない。
送り出し国と連携し、実効性のある対策を打ち出すべきである。問題点を改めて洗い出し、是正策をまとめることが肝要だ。
外国人が日本社会に適応しやすい環境を整備することが、国民の不安の軽減につながる。
日本語教育をはじめ、生活相談や医療、住宅の提供など、きめ細かい支援が求められる。
国と自治体の役割を明確にし、効率的に進めてもらいたい。
在留管理を担うため、法務省入国管理局から格上げされる「出入国在留管理庁」の責任は重い。
外国人の出入国管理や、受け入れ企業への調査や指導を担う。約5400人に増員するとはいえ、厚生労働省や市区町村と密接に連携することが重要である。
法施行に先だって、政府は国会に、受け入れ分野ごとの運用方針や、外国人労働者に対する総合的な支援策などの全体像を提示する。多角的な観点から、与野党が妥当性を吟味すべきだ。
◆人口減対応の戦略描け
人口減少のペースは今後も加速する見通しだ。手立てを講じなければ、日本経済は縮小を余儀なくされよう。国際通貨基金(IMF)は、実質国内総生産(GDP)は今後40年で約25%減少する恐れがあると指摘している。
一連の国会審議は低調で、外国人労働者をどう位置付けるのかといった全体像についての論議が深まらなかったのは残念だ。
数十年先を見越し、経済や社会の活力をいかに維持するか。政府を挙げて、真剣に議論すべきだ。司令塔を明確にし、少子高齢化社会に対応した中長期的な戦略を描くことが大切である。