大阪市内の分譲マンションにあるグループホーム
障害者が暮らすグループホームを、住居用に販売された分譲マンションで運営することの是非が、大阪地裁で争われている。大阪市内にあるマンションの管理組合が、「住居以外の用途を禁止する管理規約に反する」と、グループホームを運営する社会福祉法人に対し使用禁止などを求めて提訴。法人側は「グループホームは利用者が共同生活を営む住居」として反論している。分譲マンションの利用を巡る訴訟はこれまでも司法判断が分かれており、グループホームが住まいとしての利用とみなされるか否かが注目される。
「住宅以外の使用は禁止」
訴状などによると、グループホームがあるのは大阪市内の15階建て分譲マンション。1階は店舗だが、2階以上(約250戸)は住戸となっている。
平成28年、管理組合は消防署からの指摘で、マンションの2室がグループホームとして使われていることを把握。管理規約では「住戸は『住宅』として使用することと定められており、他の用途に使うことを禁じている」として、法人に使用の中止を求めた。
だが、法人が応じなかったため、管理組合は規約に「専有部分をグループホームに供してはならない」という項目を追加。マンションの臨時総会での決議をへて、30年6月、法人に対する訴えを提起した。
管理組合側は訴えの中で、グループホームがあるとマンションは消防法上、映画館や病院、旅館などと同じ区分で、最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しい「特定防火対象物」とされ、規制や義務が重くなると主張。「放置すると他の違反行為も誘発しかねない」とも述べている。
「住宅として利用」と反論
こうした主張に、法人側は「利用者が生活し、住民票の登録もある」と述べ、“グループホームは住居”との視点から反論する。
訴訟資料や法人によると、住居の区分所有者に2室を借りてグループホームを運営。現在は知的障害のある40〜60代の女性計6人が暮らしている。利用者は平日、作業所で働くなどし、夕方に帰宅。夕食や入浴を終えると、部屋でテレビを見たりして過ごし就寝している。
法人側は、こうした実態にあわせ、障害者総合支援法が「共同生活援助(グループホーム)は障害者に対し、主として夜間、共同生活を営むべき住居で相談や入浴、食事の介護といった日常生活上の援助を行うこと」としていることを挙げ、管理規約には違反しないと反論している。
さらに、「防火設備の負担増加」の懸念は「マンション全体には及ばない」と否定した上で、「グループホームは約15年間もやってきて、過去の管理組合理事らは知っていた」「現在の利用者はここで8年以上も暮らしている」とも指摘。グループホームを禁じる規約改定は「狙い撃ちで、障害者差別を意図したもの」と主張している。
運営場所探しに課題も
分譲マンションの利用をめぐる訴訟は過去にもあり、判断は分かれている。
平成18年には、託児所の運営をめぐり、東京地裁が区分所有者の共同利益に反するとして管理組合側の使用禁止請求を認める判決を出した一方、17年には、マンション内に設けられた治療院に管理組合が営業停止を求めた訴訟で、東京地裁が「(マンションで)他にも同じようなことがあるのに、治療院だけに使用禁止を求めるのは権利の乱用」として請求を退けた。
一方、グループホームの立場からは違った問題点も浮かび上がる。
今回訴えられた法人は、マンションや一軒家など11カ所でグループホームを運営しているが、設置に難色を示されることもあり、「知人や不動産会社を通じて場所を探すことが多い」という。
また、大阪府生活基盤推進課は「土地や建物を確保してグループホームを整備すると多額の費用がかかる」と指摘する。
府と大阪市が26年に実施した障害者のグループホームに関する調査によると、回答があった府内のグループホーム1245戸のうち、67%が共同住宅(マンション、公営住宅など)にあり、戸建ての33%を大幅に上回った。同課は「集合住宅が多い都市部ならではの事情も影響しているのでは」と分析している。
大阪府では公営住宅でのグループホーム設置を後押ししているといい、障害者のグループホームがある共同住宅の64%を公営住宅が占めるという。
(続きはソース)
産経新聞 2018.9.20 11:00
https://www.sankei.com/west/news/180920/wst1809200004-n1.html
障害者が暮らすグループホームを、住居用に販売された分譲マンションで運営することの是非が、大阪地裁で争われている。大阪市内にあるマンションの管理組合が、「住居以外の用途を禁止する管理規約に反する」と、グループホームを運営する社会福祉法人に対し使用禁止などを求めて提訴。法人側は「グループホームは利用者が共同生活を営む住居」として反論している。分譲マンションの利用を巡る訴訟はこれまでも司法判断が分かれており、グループホームが住まいとしての利用とみなされるか否かが注目される。
「住宅以外の使用は禁止」
訴状などによると、グループホームがあるのは大阪市内の15階建て分譲マンション。1階は店舗だが、2階以上(約250戸)は住戸となっている。
平成28年、管理組合は消防署からの指摘で、マンションの2室がグループホームとして使われていることを把握。管理規約では「住戸は『住宅』として使用することと定められており、他の用途に使うことを禁じている」として、法人に使用の中止を求めた。
だが、法人が応じなかったため、管理組合は規約に「専有部分をグループホームに供してはならない」という項目を追加。マンションの臨時総会での決議をへて、30年6月、法人に対する訴えを提起した。
管理組合側は訴えの中で、グループホームがあるとマンションは消防法上、映画館や病院、旅館などと同じ区分で、最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しい「特定防火対象物」とされ、規制や義務が重くなると主張。「放置すると他の違反行為も誘発しかねない」とも述べている。
「住宅として利用」と反論
こうした主張に、法人側は「利用者が生活し、住民票の登録もある」と述べ、“グループホームは住居”との視点から反論する。
訴訟資料や法人によると、住居の区分所有者に2室を借りてグループホームを運営。現在は知的障害のある40〜60代の女性計6人が暮らしている。利用者は平日、作業所で働くなどし、夕方に帰宅。夕食や入浴を終えると、部屋でテレビを見たりして過ごし就寝している。
法人側は、こうした実態にあわせ、障害者総合支援法が「共同生活援助(グループホーム)は障害者に対し、主として夜間、共同生活を営むべき住居で相談や入浴、食事の介護といった日常生活上の援助を行うこと」としていることを挙げ、管理規約には違反しないと反論している。
さらに、「防火設備の負担増加」の懸念は「マンション全体には及ばない」と否定した上で、「グループホームは約15年間もやってきて、過去の管理組合理事らは知っていた」「現在の利用者はここで8年以上も暮らしている」とも指摘。グループホームを禁じる規約改定は「狙い撃ちで、障害者差別を意図したもの」と主張している。
運営場所探しに課題も
分譲マンションの利用をめぐる訴訟は過去にもあり、判断は分かれている。
平成18年には、託児所の運営をめぐり、東京地裁が区分所有者の共同利益に反するとして管理組合側の使用禁止請求を認める判決を出した一方、17年には、マンション内に設けられた治療院に管理組合が営業停止を求めた訴訟で、東京地裁が「(マンションで)他にも同じようなことがあるのに、治療院だけに使用禁止を求めるのは権利の乱用」として請求を退けた。
一方、グループホームの立場からは違った問題点も浮かび上がる。
今回訴えられた法人は、マンションや一軒家など11カ所でグループホームを運営しているが、設置に難色を示されることもあり、「知人や不動産会社を通じて場所を探すことが多い」という。
また、大阪府生活基盤推進課は「土地や建物を確保してグループホームを整備すると多額の費用がかかる」と指摘する。
府と大阪市が26年に実施した障害者のグループホームに関する調査によると、回答があった府内のグループホーム1245戸のうち、67%が共同住宅(マンション、公営住宅など)にあり、戸建ての33%を大幅に上回った。同課は「集合住宅が多い都市部ならではの事情も影響しているのでは」と分析している。
大阪府では公営住宅でのグループホーム設置を後押ししているといい、障害者のグループホームがある共同住宅の64%を公営住宅が占めるという。
(続きはソース)
産経新聞 2018.9.20 11:00
https://www.sankei.com/west/news/180920/wst1809200004-n1.html