モルディブ大統領選の構図
【ニューデリー松井聡】インド洋の島しょ国モルディブで、5年の任期満了に伴う大統領選が23日に実施される。選挙では中国の支援でインフラ整備を進めてきた現職のヤミーン大統領と、中国への過度な依存は避けて、インドや欧米との協調を訴える野党連合が争う。ヤミーン氏はこれまで野党政治家らを次々と拘束するなど強権的な姿勢を強めており、米国などは選挙の公平性に懸念を示している。
「外国は内政干渉に興味があるだけだ。モルディブの発展は彼らの優先事項ではない」。ヤミーン氏は今月中旬の演説で、政権批判を強めるインドや欧米をけん制した。
ヤミーン氏は2013年の大統領就任後、伝統的に友好関係にあったインドと距離を置き、英連邦も脱退。中国が進める経済圏構想「一帯一路」に参加するなど中国との関係を強化した。国内では、同氏の政敵でインドや欧米に近いナシード元大統領(現在は英国に亡命中)ら野党政治家が「反テロ法違反罪」などで次々と拘束され、有罪判決を受けた。
だが今年2月、最高裁はナシード氏らに出された有罪判決が「政治的動機に基づき不当」として釈放を決定。反発したヤミーン氏は、非常事態を宣言して最高裁長官や野党政治家らを相次いで拘束した。最終的に最高裁は決定を取り消した。
大統領選では、野党連合は選管から出馬を認められなかったナシード氏に代わりベテラン議員でモルディブ民主党のソリ氏を擁立。現政権の強権的な手法を批判するとともに、インフラ整備に伴い中国などへの巨額の債務が生じているとして、中国への過度な依存は避けるべきだと主張している。ヤミーン氏は「債務の半分以上は以前の政権が作った」と反論している。
政権への攻勢を強める野党連合だが一枚岩ではない。世俗的なナシード氏とは意見が異なるサウジアラビアに近いとされるイスラム主義政党も、1978年から30年間独裁体制を敷いたガユーム元大統領も加わっているからだ。「連合は強権主義を批判しているが自己矛盾だ」(外交筋)との指摘もある。
地元ジャーナリストによると、野党連合は都市部を中心に勢いを増し、接戦の見通し。米国務省は6日、「モルディブが民主主義への道に戻らなければ適切な措置を考える」と現政権をけん制している。野党連合は「政府はおそらく不正をする」と指摘しており、展開次第で政情が再び混乱する可能性もありそうだ。
毎日新聞 2018年9月16日 22時27分
https://mainichi.jp/articles/20180917/k00/00m/030/076000c
毎日新聞 2018年9月17日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180917/ddm/007/030/188000c
【ニューデリー松井聡】インド洋の島しょ国モルディブで、5年の任期満了に伴う大統領選が23日に実施される。選挙では中国の支援でインフラ整備を進めてきた現職のヤミーン大統領と、中国への過度な依存は避けて、インドや欧米との協調を訴える野党連合が争う。ヤミーン氏はこれまで野党政治家らを次々と拘束するなど強権的な姿勢を強めており、米国などは選挙の公平性に懸念を示している。
「外国は内政干渉に興味があるだけだ。モルディブの発展は彼らの優先事項ではない」。ヤミーン氏は今月中旬の演説で、政権批判を強めるインドや欧米をけん制した。
ヤミーン氏は2013年の大統領就任後、伝統的に友好関係にあったインドと距離を置き、英連邦も脱退。中国が進める経済圏構想「一帯一路」に参加するなど中国との関係を強化した。国内では、同氏の政敵でインドや欧米に近いナシード元大統領(現在は英国に亡命中)ら野党政治家が「反テロ法違反罪」などで次々と拘束され、有罪判決を受けた。
だが今年2月、最高裁はナシード氏らに出された有罪判決が「政治的動機に基づき不当」として釈放を決定。反発したヤミーン氏は、非常事態を宣言して最高裁長官や野党政治家らを相次いで拘束した。最終的に最高裁は決定を取り消した。
大統領選では、野党連合は選管から出馬を認められなかったナシード氏に代わりベテラン議員でモルディブ民主党のソリ氏を擁立。現政権の強権的な手法を批判するとともに、インフラ整備に伴い中国などへの巨額の債務が生じているとして、中国への過度な依存は避けるべきだと主張している。ヤミーン氏は「債務の半分以上は以前の政権が作った」と反論している。
政権への攻勢を強める野党連合だが一枚岩ではない。世俗的なナシード氏とは意見が異なるサウジアラビアに近いとされるイスラム主義政党も、1978年から30年間独裁体制を敷いたガユーム元大統領も加わっているからだ。「連合は強権主義を批判しているが自己矛盾だ」(外交筋)との指摘もある。
地元ジャーナリストによると、野党連合は都市部を中心に勢いを増し、接戦の見通し。米国務省は6日、「モルディブが民主主義への道に戻らなければ適切な措置を考える」と現政権をけん制している。野党連合は「政府はおそらく不正をする」と指摘しており、展開次第で政情が再び混乱する可能性もありそうだ。
毎日新聞 2018年9月16日 22時27分
https://mainichi.jp/articles/20180917/k00/00m/030/076000c
毎日新聞 2018年9月17日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180917/ddm/007/030/188000c