福岡県鞍手町発注の下水道業務の入札を巡り、加重収賄容疑で再逮捕された前町長の徳島真次容疑者(59)=7月31日に辞職=は、同容疑でともに再逮捕された、業者との仲介役の男2人を町内の病院の理事にするよう画策していた。町長に人事権はなく批判を浴びて撤回したが、反発した内科医6人が辞職。特色あるまちづくりで注目された徳島容疑者だが、今回の事件で表面化した、職権を乱用した強引な手法に町は振り回されていた。
「やる気がある首長だと思っていたんだけど、なぜこんなことになったんだろうね」。徳島容疑者をよく知る近隣の市議は再逮捕の報道に首をかしげた。
徳島容疑者が町長だった2015年、町がコスプレファンらに開放した町内の廃校は「コスプレの聖地」として知られるようになり、現在も全国からファンが訪れる。この市議も「町を発展させた功績は大きい」と言う。
部下が「自分の考えを強く出すタイプ」と評し、ユニークな施策で近隣自治体からも一目置かれた徳島容疑者。その手法が疑問視されるようになったのが、地方独立行政法人「くらて病院」の人事を巡るドタバタだった。
町関係者によると、病院は町が設置したが、13年度に独法に移行し、町の人事権は理事長などに限られていた。ところが、徳島容疑者は17年4月、後に今回の汚職事件に絡んで逮捕されることになる仲介役の男2人を理事にするよう病院に要求。病院は老朽化で、20年度まで、総事業費65億円の建て替えが議論されており、ある町議は「建て替えに絡む利権を狙ったのでは」と推測する。
加えて副理事長らに辞職を迫った徳島容疑者に対し、病院職員らは「不当な人事介入だ」として町議会議長に嘆願書を提出。議会が特別調査委員会を設置し追及した結果、同年10月、徳島容疑者は議会で一連の騒動を謝罪し要求を撤回したが、院長を含む内科医6人が病院を去る異常事態に発展した。
再逮捕容疑は、15年7月に町が実施した下水道設計業務の入札で、非公表の最低制限価格を2人の仲介役を通して業者に漏えいし、見返りとして現金150万円を受け取ったというものだが、これも発端は徳島容疑者の職権乱用だった。町は従来、コスト高になるのを避けるため設計業務に最低制限価格は設けていなかったが、徳島容疑者が強引に導入を決めて価格を設定し、漏えいしたとされる。
当時副町長を務めていた元町職員の阿部哲(さとし)氏は「最低制限価格を設定すると決めた際『不正につながるからやめた方がいい』といさめたが聞き入れられなかった。当時はこんなことになるとは思っていなかったが、防げなかった責任を感じている」と語った。【平塚雄太】
毎日新聞 2018年8月26日 06時30分(最終更新 8月26日 06時30分)
https://mainichi.jp/articles/20180826/k00/00m/040/138000c
毎日新聞 2018年8月26日 西部朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180826/ddp/041/040/029000c
「やる気がある首長だと思っていたんだけど、なぜこんなことになったんだろうね」。徳島容疑者をよく知る近隣の市議は再逮捕の報道に首をかしげた。
徳島容疑者が町長だった2015年、町がコスプレファンらに開放した町内の廃校は「コスプレの聖地」として知られるようになり、現在も全国からファンが訪れる。この市議も「町を発展させた功績は大きい」と言う。
部下が「自分の考えを強く出すタイプ」と評し、ユニークな施策で近隣自治体からも一目置かれた徳島容疑者。その手法が疑問視されるようになったのが、地方独立行政法人「くらて病院」の人事を巡るドタバタだった。
町関係者によると、病院は町が設置したが、13年度に独法に移行し、町の人事権は理事長などに限られていた。ところが、徳島容疑者は17年4月、後に今回の汚職事件に絡んで逮捕されることになる仲介役の男2人を理事にするよう病院に要求。病院は老朽化で、20年度まで、総事業費65億円の建て替えが議論されており、ある町議は「建て替えに絡む利権を狙ったのでは」と推測する。
加えて副理事長らに辞職を迫った徳島容疑者に対し、病院職員らは「不当な人事介入だ」として町議会議長に嘆願書を提出。議会が特別調査委員会を設置し追及した結果、同年10月、徳島容疑者は議会で一連の騒動を謝罪し要求を撤回したが、院長を含む内科医6人が病院を去る異常事態に発展した。
再逮捕容疑は、15年7月に町が実施した下水道設計業務の入札で、非公表の最低制限価格を2人の仲介役を通して業者に漏えいし、見返りとして現金150万円を受け取ったというものだが、これも発端は徳島容疑者の職権乱用だった。町は従来、コスト高になるのを避けるため設計業務に最低制限価格は設けていなかったが、徳島容疑者が強引に導入を決めて価格を設定し、漏えいしたとされる。
当時副町長を務めていた元町職員の阿部哲(さとし)氏は「最低制限価格を設定すると決めた際『不正につながるからやめた方がいい』といさめたが聞き入れられなかった。当時はこんなことになるとは思っていなかったが、防げなかった責任を感じている」と語った。【平塚雄太】
毎日新聞 2018年8月26日 06時30分(最終更新 8月26日 06時30分)
https://mainichi.jp/articles/20180826/k00/00m/040/138000c
毎日新聞 2018年8月26日 西部朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180826/ddp/041/040/029000c