公正取引委員会は7月11日、アップルと3キャリアとの間にあった、独占禁止法違反の恐れが解消したと発表した。
公取委は2年ほど前からアップルとキャリアとの間の契約関係を審査。今回、アップルと3キャリアが一部、契約を見直したことから「独禁法違反の恐れが解消した」という発表になった。
●アップルが一方的に強い関係をキャリアに押し付けている?
そもそもこの業界には「アップルとキャリアの間にはアップルが有利な契約が存在するのではないか」というまことしやかな噂があった。例えば、アップルからキャリアに対して膨大な販売ノルマがあるのではないか、iPhone専用のプランを作るように強要されているのではないか、と言った具合だ。
おそらく、ソフトバンクがiPhoneを独占的に販売していた頃はそのような条件もあったのかもしれないが、ソフトバンクに続き、KDDI、NTTドコモが扱い始めるようになったことで、そうした契約も変更されていったようだ。
公取委の審査では、販売ノルマやiPhone専用プラン、下取り端末の扱い方などにおいて、現状では独禁法違反の恐れはない状況になったとして、疑惑は解消されたのだった。
実際のところ、アップルが一方的に強い関係をキャリアに押し付けているかと言えば、決してそんなことはなさそうだ。
アップルとキャリアの契約書「iPhone Agreement」によれば、本来、iPhoneは端末購入補助金をつけた状態で売らないといけないとされていた。しかし、昨年9月、KDDIはアップルと交渉を行い、端末購入補助金のない「ピタットプラン」でiPhoneを販売できるように契約条件を変更したとされる。
実際、アップルはかなり抵抗したようだが、それでもKDDI側に押し切られるかたちで導入されることになった。アップルとしては、ピタットプランで購入した場合、ユーザーの負担額が上がることが多いため、導入に難色を示した模様だ。しかし、KDDIとしても、総務省に「ユーザーの使い方に見合った料金プランを作れ。過度な端末購入補助金を載せるな。端末代金と通信料金は分離しろ」とプレッシャーをかけられていたこともあり、ピタットプランの導入をせざるを得なかった背景がある。
アップルとしても最終的にはKDDIの立場を理解し、ピタットプランの導入に合意したようだった。
つまり、公取委が今回のような指摘をしなくても、アップルとキャリアはその場に応じて、契約を柔軟に書き換える関係にあるということだ。
●公取委が暴れまくってみたものの、「結局、何も変わらない」
今回の発表を受けて、某キャリア関係者は「アップルとキャリアの間に入って、公取委の立場の強さをアピールしただけに終わったように感じる。結局、公取委は何をしたかったのかさっぱりわからない」とぼやく。
確かに、公取委は、今回、アップルとキャリアに対して、拳を振り上げてみたものの、振り下ろすところがなくて、しかたなく、そっと拳をしまったような感がある。
キャリアとアップルの間に「iPhone Agreement」という契約関係を公に晒したのは公取委の手柄ではあるが、それがユーザーにメリットがあるかといえば決してそんなことはない。
確かに、今回の指摘によって、KDDI以外のキャリアも、iPhoneに対して「端末購入補助あり」に加えて「端末購入補助なし」の2つの売る方ができるようになる。
ただ、端末購入補助をなくすということは、10万円近くするiPhoneを購入する場合、割賦払いの期間を長くしないことには、ユーザーの月々の負担額があがることになる。
ユーザーの毎月の負担感をなくそうと思えば、48回ぐらいの分割払い導入しないといけない。
結局のところ、公取委が「けしからん」とご立腹であった、4年縛りを導入しないことには「端末購入補助なし」で売ることは難しいのだ。
実際、KDDIはピタットプランを開始する際、端末購入補助なしで売るために4年縛りの「アップグレードプログラム」を強化している。
KDDI以外のNTTドコモやソフトバンクが端末購入補助なしのプランを導入しようと思っても、4年縛りと組み合わせると、公取委からお叱りを受ける可能性が極めて高い。
キャリアがわざわざお叱りを受けるプランを導入するとは思えない。
今回、公取委が暴れまくってみたものの、「結局、何も変わらない」というオチになりそうだ。
https://japanese.engadget.com/2018/07/17/3/
公取委は2年ほど前からアップルとキャリアとの間の契約関係を審査。今回、アップルと3キャリアが一部、契約を見直したことから「独禁法違反の恐れが解消した」という発表になった。
●アップルが一方的に強い関係をキャリアに押し付けている?
そもそもこの業界には「アップルとキャリアの間にはアップルが有利な契約が存在するのではないか」というまことしやかな噂があった。例えば、アップルからキャリアに対して膨大な販売ノルマがあるのではないか、iPhone専用のプランを作るように強要されているのではないか、と言った具合だ。
おそらく、ソフトバンクがiPhoneを独占的に販売していた頃はそのような条件もあったのかもしれないが、ソフトバンクに続き、KDDI、NTTドコモが扱い始めるようになったことで、そうした契約も変更されていったようだ。
公取委の審査では、販売ノルマやiPhone専用プラン、下取り端末の扱い方などにおいて、現状では独禁法違反の恐れはない状況になったとして、疑惑は解消されたのだった。
実際のところ、アップルが一方的に強い関係をキャリアに押し付けているかと言えば、決してそんなことはなさそうだ。
アップルとキャリアの契約書「iPhone Agreement」によれば、本来、iPhoneは端末購入補助金をつけた状態で売らないといけないとされていた。しかし、昨年9月、KDDIはアップルと交渉を行い、端末購入補助金のない「ピタットプラン」でiPhoneを販売できるように契約条件を変更したとされる。
実際、アップルはかなり抵抗したようだが、それでもKDDI側に押し切られるかたちで導入されることになった。アップルとしては、ピタットプランで購入した場合、ユーザーの負担額が上がることが多いため、導入に難色を示した模様だ。しかし、KDDIとしても、総務省に「ユーザーの使い方に見合った料金プランを作れ。過度な端末購入補助金を載せるな。端末代金と通信料金は分離しろ」とプレッシャーをかけられていたこともあり、ピタットプランの導入をせざるを得なかった背景がある。
アップルとしても最終的にはKDDIの立場を理解し、ピタットプランの導入に合意したようだった。
つまり、公取委が今回のような指摘をしなくても、アップルとキャリアはその場に応じて、契約を柔軟に書き換える関係にあるということだ。
●公取委が暴れまくってみたものの、「結局、何も変わらない」
今回の発表を受けて、某キャリア関係者は「アップルとキャリアの間に入って、公取委の立場の強さをアピールしただけに終わったように感じる。結局、公取委は何をしたかったのかさっぱりわからない」とぼやく。
確かに、公取委は、今回、アップルとキャリアに対して、拳を振り上げてみたものの、振り下ろすところがなくて、しかたなく、そっと拳をしまったような感がある。
キャリアとアップルの間に「iPhone Agreement」という契約関係を公に晒したのは公取委の手柄ではあるが、それがユーザーにメリットがあるかといえば決してそんなことはない。
確かに、今回の指摘によって、KDDI以外のキャリアも、iPhoneに対して「端末購入補助あり」に加えて「端末購入補助なし」の2つの売る方ができるようになる。
ただ、端末購入補助をなくすということは、10万円近くするiPhoneを購入する場合、割賦払いの期間を長くしないことには、ユーザーの月々の負担額があがることになる。
ユーザーの毎月の負担感をなくそうと思えば、48回ぐらいの分割払い導入しないといけない。
結局のところ、公取委が「けしからん」とご立腹であった、4年縛りを導入しないことには「端末購入補助なし」で売ることは難しいのだ。
実際、KDDIはピタットプランを開始する際、端末購入補助なしで売るために4年縛りの「アップグレードプログラム」を強化している。
KDDI以外のNTTドコモやソフトバンクが端末購入補助なしのプランを導入しようと思っても、4年縛りと組み合わせると、公取委からお叱りを受ける可能性が極めて高い。
キャリアがわざわざお叱りを受けるプランを導入するとは思えない。
今回、公取委が暴れまくってみたものの、「結局、何も変わらない」というオチになりそうだ。
https://japanese.engadget.com/2018/07/17/3/