千葉公園(千葉市中央区)に隣接する市営の千葉競輪場の解体に向けた準備が進んでいる。閉鎖も検討されたが、国際規格に準拠した屋内250メートルバンクを備える多目的施設「千葉公園ドーム」(仮称)として2020年度後半にも生まれ変わる。整備主体の「日本写真判定」(東京都)はなぜ建設費を全額負担してまで建て替えるのか。観客が減少する中、同ドームで新たに始まる「250(にーごーまる)競輪」とはどのような競輪なのか。【信田真由美】
千葉競輪場の運営委託先で県外でも競輪事業を手がける日本写真判定から千葉市に打診があったのは2016年6月だった。同社が建て替え費用を全額負担する提案について、「当初は懐疑的だった」。熊谷俊人市長は今年2月の定例記者会見でこう打ち明けた。
千葉競輪場は戦後の復興事業の一環として1949年に開業した。最盛期の71年度には約132万人の観客を集めたが、レジャーの多様化などにより、年々減少の一途をたどり昨年度は約5万人まで落ち込んでいた。施設の老朽化や耐震不足による改修費も必要で、市は15年に事業廃止の方針を表明していた。
競輪の低迷は全国的に起きている。00年に全国に50あった競輪場は現在43に減少。「現状のままでは、選手の働き場も日本写真判定の仕事もなくなってしまう」(同社)。そこで同社が目を向けたのが世界の自転車競技だった。
競輪の規格は、屋外で1周の走路を300メートル以上500メートル以下、路面はコンクリート製と規定する。一方、自転車競技の国際規格は1周250メートルで路面は木製の屋内トラック。国際規格のトラックで競輪はできなかったが、同社が提案したのは、250メートルバンクでの新たな競輪だった。
同社によると、これまで競輪選手が自転車競技の国際大会を目指すことは少なかった。自転車競技だけで選手が生計を立てるのも難しく、同社の町田利寛専務は「250メートルバンクで競輪を行えるようになれば、競輪を職業としながらも自転車競技の競技力を上げていける」と話す。
競輪場の存続を巡っては、地元の選手会も動いた。レースの合間に駅や競輪場に立ち、250メートルバンクに改修して存続を求める署名活動を行った。熊谷市長は「競輪界としてこれをやらないと厳しいというのがかつてないほどに伝わってきた」と振り返る。同社は市に、競輪や自転車競技の国際大会のほか、コンサートやイベント、フットサル、バレーボールなどの会場として貸し出すことも提案。これを受け、市は、競輪を所管する経済産業省や関係団体と協議し250メートルバンクでも競輪ができるようルールを変更することで方向性が一致。昨年、存続を決めた。「千葉駅周辺の活性化に競輪にとどまらない意義があると思った」。熊谷市長はこう理由を述べる。
国際規格に沿った自転車トラック競技場は伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)に続き、全国2例目。千葉市には日本の競技力向上に貢献するとともに、「自転車を活用したまちづくり」をPRしようという狙いもある。
5/5(土) 12:05配信 毎日新聞
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