>>1 産経新聞のデマ記事によって、情弱バカウヨがデマを盲信している例w
http://www.geocities.jp/yu77799/731/beikokubunsho.html 「731部隊」に関し、twitterではしばしば次のような内容の「つぶやき」が流れます。おそらくこれが、ネットでは最もポピュラーな「否定論」でしょう。
『ナチスドイツと日本の「戦争犯罪」を調査をしたアメリカの記録作業部会でも、アメリカが持っていた731部隊に関する10万ページの機密文書には
731部隊が人体実験をしたり細菌戦を行った証拠は全くなく、戦後言われたことは全て嘘っぱちらしいです。』
結論から書けば、これは全くのデマです。
「人体実験」を示す決定的なアメリカ側資料として、従来から、「フェル・レポート」「ヒル・レポート」、及びその元となった石井部隊幹部への尋問記録などが知られています。
2007年に行われたこの「10万ページ」の文書公開では、単にそれ以上の新しい資料が出てこなかった、というだけの話であり、これらの資料が否定されたわけでも、「上書き」されたわけでもありません。
言うまでもなく、このような「珍論」は、一般の論壇から聞かれることは全くありません。どうしてネットでこのような「都市伝説」が生じたのか。以下、見ていくことにしましょう。
(中略)
では、この2007年になって公開された資料とは、一体何なのでしょうか。
検索をかけると、2007年当時のサンケイ新聞記事がヒットします。(元記事はすでに消えており、そのコピーだけが残っています)
(記事省略)
一見してこの記事は、「731部隊」についてほとんど知識を持たない記者によって書かれたことがわかります。
記者は「新発見資料」が続出したかのような書き方をしていますが、例えば「細菌戦研究の成果を米軍に引き渡したとされる石井中将が、米側に提出する文書を1947年(昭和22年)6月ごろ執筆していたことを裏付ける最高機密文書」、
あるいは「47年6月20日付の米軍最高機密文書」というのは、明らかに「フェル・レポート」のことです。
「フェル・レポート」は、1980年代から既に公開されている有名な資料です。記者はどうやら、こんな基礎資料もご存じなかったようです。
また「石井四郎軍医中将を含む731部隊(関東軍防疫給水部)関係者の個別尋問記録」というのは「ヒル・レポート」に付属する尋問記録でしょう。こちらも従来からよく知られている資料です。
さて、プロの研究者はこの「2007年文書公開」をどのように見たか。近藤昭二氏の一文を紹介しましょう。
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近藤昭二『米軍接収資料の返還と七三一・細菌戦資料の行方』(下)
この結果は二〇〇七年になって公表された。七年に及ぶ作業で八〇〇万頁の文書をチェックしたという。(P53-P54)
二〇〇七年一月、三種のガイド・約一〇万ページ分の以下のリストが発表された。
*Japanese War Crimes and Related Records:A Guide to Records in the National Archives compiled by Greg Bradsher. 日本の戦争犯罪と関係記録:国立公文書館の記録ガイド(一七〇〇ページ余)
*Researching Japanese War Crimes Records : Introductory Essays by IWG 日本の戦争犯罪の記録探求(二三〇ページ余)
*Selected Documents on Japanese War Crimes and Japanese Biological Warfar 1934-2006 compiled by William H.Cunriffe 日本の戦争犯罪と生物戦の記録選(一七〇ページ、一二五〇件)
結果は、この中には、先のフェルやヒルの報告書は含まれていたが、しかし、七三一部隊から吸い上げた一次資料は含まれていなかった。(P54)
(『戦争責任研究』2012年春季号所収)
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結局、この「2007年公開資料」の中には、目新しい資料は含まれていなかったようです。研究者の間でも、ほとんど話題にならないままに終わってしまいました。
余談ですが、サンケイ記事では「10万ページ」の「文書内容の大半は731部隊など細菌戦研究に関する内容だ」ということになっていました。
実際にはこの文書のメインは「日本の戦争犯罪」であり、「生物戦」の部分はそのごく一部に過ぎなかったようです。