テレビCMやドラックストアの店頭でよく見かけるサプリメント「グルコサミン」。実際に飲んでいる人も多い人気商品だ。
「グルコサミン」は、軟骨成分である「プロテオグリカン」や関節液の「ヒアルロン酸」の原料となる。
さらに、グルコサミンは軟骨成分の合成を助ける作用もあるため<グルコサミン=関節にいい>というわけだ。
また、関節部分の水分保持の働きをもつ「コンドロイチン」は、グルコサミンが元となる。
ちなみに、関節をスムーズに動かすのに必要なヒアルロン酸は、加齢とともに減少する。
関節の痛みや不調に対してヒアルロン酸を注射するのは、潤滑成分を補うことで解決しようという考えからである。
そういうわけで、<グルコサミン=関節にいい>というイメージは一般的に定着し、サプリメントとしても高く認知されているのだ。
ところが最近、グルコサミン信奉者にとって、残念な報告がもたらされた。
それは『BMJ Journals』(7月28日オンライン版)で発表された。
原題は『Subgroup analyses of the effectiveness of oral glucosamine for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual patient data meta-analysis from the OA trail bank』である。
つまり、邦訳すると<口から摂取するグルコサミンは、膝や股関節の痛みには効きません>……。
■ グルコサミンは効かない!?
グルコサミンに関する研究結果は、これまでにも複数が報告されている。
今回の最新研究では、それらの「グルコサミンのサプリメントを摂取した(3カ月間〜2年間)グループと摂取しないグループを比べた」エビデンスレベルのいちばん高い「ランダム化比較試験」を集めて比較した。
その結果、性別にかかわらず、関節に炎症が生じているグループ、過体重なグループ、痛みが強いグループなどすべての群において、短期間(3カ月)でも長期間(2年間)でも「グルコサミンは飲んで飲まなくて結果に差がない」というのだ。
これまでグルコサミンの効果を信じて愛用してきた人たちとっては、衝撃的である。
■ 消化されたグルコサミンが関節に浸透するのかという疑念
たとえば、アメリカにおけるサプリメントの市場は巨大だ。
米国国立保健統計センターの最新の報告によると、2012年にはサプリメントに約130億ドル(約1兆3000億円)が消費され、なかでもグルコサミンは売れ筋のひとつだ。
日本でもドラックストアや通信販売でサプリメントは人気商品である。
ところが、今回の研究結果は、グルコサミン人気に水を差すものとなった。
関節部位に直接ヒアルロン酸を注射するならまだしも、冷静に考えると、口から摂取して胃腸で消化されたグルコサミンが膝や股関節に浸透する――のだろうかという疑念は湧く。
■ グルコサミンで腹痛・頭痛・下痢・胸やけ
しかも、グルコサミンには副作用があるのをご存じだろうか?
グルコサミンの副作用には、腹痛・頭痛・下痢・胸やけなどが公表されている。
効かないばかりか、過剰摂取で健康を害する危険性さえある。
近年、「口から摂取するグルコサミンはほとんど効果がない」という研究報告は相次いでおり、医療業界では常識になりつつある。
たとえば、『Osteoarthritis and Cartilage(変形性関節症と軟骨)』(2009年)に掲載された変形性関節症のガイドラインには、「口から摂取するグルコサミンの効果はエビデンスに欠けるのでおすすめできない」と明記されている。
また、英国国立技術評価機構(NICE)も「痛みを改善する効果は期待できないだろう」と評価している。
すでに発表された研究の中には、グルコサミンを24週間摂取しても、MRIなどの画像に膝関節の構造上の変化(軟骨の再生や増大)は認められなかった――というものもある。
サプリメントや健康食品の業界は、毀誉褒貶の激しい世界だ。
さまざまな新商品が登場する一方で、研究の結果、「効かない」という烙印を押されて消えゆくものも少なくない。
「テレビCMでガンガンやっている」「薬局でたくさん売っている」ということが、必ずしも「効果がある」というエビデンスとはならない
。本当に効果・効能が明らかならば、医薬品として認められるであろう。
玉石混交の情報があふれる現代では、最新の知見にも目を配らせて、正しい情報を手に入れる<賢い消費者>でありたい。
http://healthpress.jp/2017/08/post-3170.html
「グルコサミン」は、軟骨成分である「プロテオグリカン」や関節液の「ヒアルロン酸」の原料となる。
さらに、グルコサミンは軟骨成分の合成を助ける作用もあるため<グルコサミン=関節にいい>というわけだ。
また、関節部分の水分保持の働きをもつ「コンドロイチン」は、グルコサミンが元となる。
ちなみに、関節をスムーズに動かすのに必要なヒアルロン酸は、加齢とともに減少する。
関節の痛みや不調に対してヒアルロン酸を注射するのは、潤滑成分を補うことで解決しようという考えからである。
そういうわけで、<グルコサミン=関節にいい>というイメージは一般的に定着し、サプリメントとしても高く認知されているのだ。
ところが最近、グルコサミン信奉者にとって、残念な報告がもたらされた。
それは『BMJ Journals』(7月28日オンライン版)で発表された。
原題は『Subgroup analyses of the effectiveness of oral glucosamine for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual patient data meta-analysis from the OA trail bank』である。
つまり、邦訳すると<口から摂取するグルコサミンは、膝や股関節の痛みには効きません>……。
■ グルコサミンは効かない!?
グルコサミンに関する研究結果は、これまでにも複数が報告されている。
今回の最新研究では、それらの「グルコサミンのサプリメントを摂取した(3カ月間〜2年間)グループと摂取しないグループを比べた」エビデンスレベルのいちばん高い「ランダム化比較試験」を集めて比較した。
その結果、性別にかかわらず、関節に炎症が生じているグループ、過体重なグループ、痛みが強いグループなどすべての群において、短期間(3カ月)でも長期間(2年間)でも「グルコサミンは飲んで飲まなくて結果に差がない」というのだ。
これまでグルコサミンの効果を信じて愛用してきた人たちとっては、衝撃的である。
■ 消化されたグルコサミンが関節に浸透するのかという疑念
たとえば、アメリカにおけるサプリメントの市場は巨大だ。
米国国立保健統計センターの最新の報告によると、2012年にはサプリメントに約130億ドル(約1兆3000億円)が消費され、なかでもグルコサミンは売れ筋のひとつだ。
日本でもドラックストアや通信販売でサプリメントは人気商品である。
ところが、今回の研究結果は、グルコサミン人気に水を差すものとなった。
関節部位に直接ヒアルロン酸を注射するならまだしも、冷静に考えると、口から摂取して胃腸で消化されたグルコサミンが膝や股関節に浸透する――のだろうかという疑念は湧く。
■ グルコサミンで腹痛・頭痛・下痢・胸やけ
しかも、グルコサミンには副作用があるのをご存じだろうか?
グルコサミンの副作用には、腹痛・頭痛・下痢・胸やけなどが公表されている。
効かないばかりか、過剰摂取で健康を害する危険性さえある。
近年、「口から摂取するグルコサミンはほとんど効果がない」という研究報告は相次いでおり、医療業界では常識になりつつある。
たとえば、『Osteoarthritis and Cartilage(変形性関節症と軟骨)』(2009年)に掲載された変形性関節症のガイドラインには、「口から摂取するグルコサミンの効果はエビデンスに欠けるのでおすすめできない」と明記されている。
また、英国国立技術評価機構(NICE)も「痛みを改善する効果は期待できないだろう」と評価している。
すでに発表された研究の中には、グルコサミンを24週間摂取しても、MRIなどの画像に膝関節の構造上の変化(軟骨の再生や増大)は認められなかった――というものもある。
サプリメントや健康食品の業界は、毀誉褒貶の激しい世界だ。
さまざまな新商品が登場する一方で、研究の結果、「効かない」という烙印を押されて消えゆくものも少なくない。
「テレビCMでガンガンやっている」「薬局でたくさん売っている」ということが、必ずしも「効果がある」というエビデンスとはならない
。本当に効果・効能が明らかならば、医薬品として認められるであろう。
玉石混交の情報があふれる現代では、最新の知見にも目を配らせて、正しい情報を手に入れる<賢い消費者>でありたい。
http://healthpress.jp/2017/08/post-3170.html