地方によっては降雪することもあるこの季節、
早朝仕事へ向かう最中に、黒タイツを穿いた女学生たちを多く見かけるようになった。
自転車に乗って、ペダルを漕ぐたびに黒タイツ越しの太ももを見せつける女学生。
バスに乗り遅れまいと、スカートを浮き上がらせながらたどたどしい足取りでバタバタと走る女学生。
これが通学区分された歩道に面するともなれば、目に映る女学生すべてが黒タイツという、
酒池肉林すら足下に及ばない、まさに桃源郷とでも形容すべき光景が広がっていることもままある。
指折り数えることなどもはや不可能なくらいの黒タイツは、いったいどこから来て、どこへ向かうのだろうか。
時折、そのような途方のない思考を巡らせることがある。
私が出勤中に見られる以上の黒タイツが、まだまだ日本中の学校に収まっているのかと思うと、
宇宙の深淵、あるいは深海の全容をこの目にしようとしているような、畏怖にも似た感情を覚えずにはいられない。
女学生たちが穿いている黒タイツは、学舎での学業が終わり、家に帰り着けば、脱ぎ捨てられてゴミ箱の中へ収められる。
黒タイツが収められるのがゴミ箱。これには少し違和感を覚えずにはいられない。
ゴミ箱は、女学生の黒タイツが入れられた瞬間、まさしく世の男の夢が詰まった、神聖なる箱となるのだ。
であるとすれば、それは「ゴミの箱」ではなく、「夢の箱」なのではないだろうか。
その論に行き着いた瞬間、私の頭の中で電撃にも似た衝撃が走った。
東京都江東区にある有名なゴミ集積所があるのは、たしか「夢の島」ではなかっただろうか。
私の頭の中で、すべてのピースが繋がりあっていくのを感じた。
男たちの夢、黒タイツ、ゴミ箱ではなく夢の箱、それらの集積地点が、夢の島……。
もはや単なる符合ではない……! そうこれは、天啓の域に達している!
私はこうしてはいられないとワーゲンのステアリングを軽やかに回し、空港へと向かう道路に進入した。
この先に、私の夢見る彼の地、夢の島がある。
朝日が眩しく、私を照らしている。私の未来は、この美しい地球のように、まばゆく光り輝いている。