【北京時事】中国の習近平政権が進める軍の汚職摘発が拡大している。
28日には、軍の最高指導機関である中央軍事委員会の苗華委員が調査を受けていることが明らかになった。苗氏は習国家主席(中央軍事委主席)の側近の一人。2017年以来、7人で構成されてきた同委は事実上2人が欠員する異例の事態に陥っており、軍内部で権力闘争が激化しているという観測も出ている。
「重大な規律違反の疑いがあり、共産党中央が職務停止を決めた」。中国国防省の呉謙報道官は28日の定例記者会見で、苗氏について突然、発表した。具体的な容疑は不明だが、昨年から続いている汚職摘発の一環とみられている。
苗氏は、14歳で入隊し、最高位の上将まで上り詰めた。習氏と同時期に福建省で勤務し、知遇を得たとされる。長く陸軍に属していたが、海軍力強化を目指す習氏の意向を受け海軍政治委員に就任。17年に中央軍事委入りし、政治工作部主任を務めてきた。
政治教育に加え組織・人事管理などを担当する政治工作部主任は、軍事外交を主な任務とする国防相よりも大きな権限を持つ。苗氏は、海軍出身者を要職に登用する役割を担ってきたことから、陸軍関係者から恨みを買っていた可能性がある。周辺国の軍事専門家は「軍内部の主導権争いの結果、苗氏は失脚した」との見方を示す。
昨年夏以降に本格化した大規模な汚職調査では、中央軍事委メンバーだった李尚福前国防相、前任の魏鳳和元国防相が摘発された。李氏の後任の国防相となった董軍氏は中央軍事委入りしておらず、軍で激しい内部対立が起きているとの臆測が広がる一因となっている。呉報道官は強く否定したが、英紙フィナンシャル・タイムズは董氏が調査を受けていると26日に報じた。
習氏は、武力による台湾統一を否定せず、軍の統合作戦能力の向上を進めている。しかし、自身に近い人物にまで広がった腐敗は「軍再編の推進に影響しかねない」(香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト)状況だ。
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