フランス紙ルモンド(電子版)は2日、仏政府がパリの中国大使館に駐在する公安担当の外交官2人に国外退去を求めたと報じた。中国共産党政権に批判的な在仏中国人の強制帰国を指揮したのが理由だとしている。
同紙によると、退去要求を受けたのは、中国公安省が派遣した責任者とその補佐官。今年3月、パリのシャルル・ドゴール国際空港で7人の集団が中国人男性(26)を中国行き便の搭乗口に無理やり連れ込もうとする騒ぎがあり、仏情報部の調べでこの責任者が指揮したことが分かった。男性のパスポートを取り上げて、帰国圧力をかけたという。この男性はパリ在住で、習近平国家主席の肖像を傷つけ、体制批判を交流サイト(SNS)で発信していた。
仏外務省は2人を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)に指定する公式手続きを避け、中国側との協議で決着したい意向だとしている。退去要求は今年5月の習氏の訪仏に配慮し、遅れていた。
空港での騒ぎは5月に仏公共放送で報じられた。中国がパリに置く「海外警察拠点」に男性が呼び出され、圧力を受ける様子も放送された。中国大使館は「報道はウソ。外交官は空港に男性の書類を届けに行っただけ」と反論していた。
欧州の人権団体セーフガード・ディフェンダーズによると、中国は2014年以降、約120カ国・地域から反体制派やウイグル人ら1万2千人を強制帰国させている。同団体は今春の報告書で、威嚇や拉致など「主権侵害にあたる違法な手段」が使われていると警告していた。
産経新聞 2024/7/3 11:55
https://www.sankei.com/article/20240703-KOLOQT3XMNAQXJ427VG2AVWA34/