【8月12日、龍山駅前の式典に現れたキム夫婦】
文在寅大統領のかけ声のもと、徴用工問題が、日韓の新たな火種になりつつある。慰安婦像同様、徴用工像の設置が韓国全土で進んでいる。両モニュメントの中心的な制作者である韓国人夫婦の存在をジャーナリスト・竹中明洋氏は早くから指摘してきた。とうとう、ソウルでその姿をとらえた。
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日本の植民地支配から解放された日(光復節)にあたる8月15日、韓国ソウルにある日本大使館前で土砂降りの大雨のなか集まった人たちが次々とシュプレヒコールを挙げていた。
「アベは手のひらで空を覆うことを止めて真実に目を向けろ!」
「日本は戦犯国家として過去の過ちを悔い謝罪せよ!」
「戦犯企業は労働者への未払い賃金を直ちに支払え!」
集まったのは「日帝強占期被害者全国連合会(以下、連合会)」。植民地時代に強制徴用され日本企業で働かされたとする労働者ら、つまり日本側でいうところの徴用工やその遺族からなる団体だ。
この日、連合会は徴用工の像を設置するとして記念集会を催した。
像そのものはまだ出来上がっていないが、設置を目指す場所は6年前に慰安婦の支援団体である挺身隊問題対策協議会(挺対協)が設置した慰安婦像の真横にあたる。
外国公館の安寧と威厳の保持を定めたウィーン条約に違反するとして日本政府が撤去を求めているにも拘わらず、韓国政府が放置したままにしているあの像と並べて設置するというのだ。
「我々がこの場所に労働者の像を設置する理由は、たった一人であらゆる侮辱に耐えながらぽつねんと佇んでいる少女像を守るためだけでなく、日本を代表する外交官らが少女像と労働者像を目の当たりにすることによって自分たちの過ちを常に記憶し、反面教師としてもらうためだ」
そう声明文を読み上げてみせた連合会の張徳煥(チャンドクファン)事務総長らは、集まった多くの日韓のメディアの前で、設置予定場所だとする大使館前の歩道にハンマーで釘を打ち込むパフォーマンスまでしてみせた。地元自治体のソウル市鐘路区から設置の許可を得たのか。張氏に尋ねてみた。
「まだ得ていませんが、すでに鐘路区とはやりとりを始めています。許可が出るものと確信しています」
なぜわざわざ大使館前に設置するのか。
「ひとつは少女像を守るため。もうひとつはここに設置するのが、韓日の社会的な関心を集めるには最も効果的だからです」
そう話す様子からは、ウィーン条約に抵触することは問題ではないかのようで、違和感を覚えざるを得ない。早ければ9月にも設置するという。完成イメージ図を張氏から入手した。高さ3mもある石柱に徴用工をイメージしたと思われる痩せた男性が彫られ、手が突き出している。強制徴用の歴史を物語るレリーフも彫り込まれるそうだ。
『SAPIO』で繰り返し報じたとおり、この像の制作者は、韓国各地で設置された慰安婦像の制作者と同じ彫刻家のキム・ウンソン氏とキム・ソギョン氏夫妻である。大使館前での徴用工像設置では、準備委員長という立場に就いているという。
この日も、来場予定だったが、最後まで姿を現さなかった。悪天候のためか、それとも日本メディアの直撃を憂慮したためか。実は、これに先立つ3日前、筆者は夫妻に接触していた。
2017.09.06 07:00
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