北朝鮮を制御できるのは90%の貿易を有する中国しかいないと、米国のドナルド・トランプ大統領は4月の習近平国家主席との会談で思ったに違いない。
そこで、北朝鮮が国連の度重なる警告や制裁を無視して核弾頭の開発と弾道ミサイル発射を繰り返しても、大統領は当初「中国はよくやっている」と主席を褒め称えた。
しかし、国連の制裁が何度決議されても、一向に北朝鮮の抑制につながっていない。そのことから、米国は北朝鮮抑制で中国依存は間違いではないかと思うようになってきた。G7の後、安倍晋三首相の言っていたことが正しかったとさえ発言するようになる。
中国頼みが期待できないと観念した米国は、自らが主体的に関わる以外にないと思い始めた節がある。
7月28日付の「産経新聞」が報じた26日付ワシントン・タイムズとマイク・ポンペイCIA(米中央情報局)長官とのインタビュー記事からは北朝鮮のレジーム・チェンジが選択肢の1つと読み取れる。
産経新聞の古森義久氏も8月2日付JBpress記事「金正恩政権打倒の方法、米国政府が具体的に検討へ 一瞬も目を離せない段階に突入した北朝鮮情勢」で、長官が7月下旬のコロラド州アスペンで開かれた国際安全保障に関するフォーラムでの発言を引用して、同趣旨の記事を書いている。
中国依存は失敗の積み重ね
米国の中国依存(または行動容認)が失敗を重ねてきたことは歴史からも明らかである。第1次世界大戦後のワシントン条約体制は、西欧のベルサイユ体制に対応して、東アジア・太平洋地域で中国の民族自決や米国の門戸開放政策を進める新秩序を確立しようとしたものであった。
しかし、肝心の中国が一向に条約を遵守せず、また条約締結の旗振りをした米国は条約遵守の日本よりも中国(即ち蒋介石、次いで毛沢東)に言論と武器支援で肩入れし、日中戦争につなげていった。
米国の外交史家ジョージ・ケナンが「疑いもなく、極東の諸国民に対するわれわれの関係は、中国人に対するある種のセンチメンタリティ―によって影響されていた。(中略)中国人に対するわれわれの態度には何か贔屓客のような感じがある」(『アメリカ外交50年』)と述べる通りであった。
こうした結果、「他国(筆者注:共産主義と戦っていた日本)がそれを引き受けていた時には、われわれが大いに軽蔑した重荷を、いま自ら負う羽目になり苦しんでいるのは、確かに意地悪い天の配剤である」と述懐する。
ソ連を相手に冷戦時代を迎えたことを自虐的に反省する弁であるが、その延長線上に今日の中国との覇権争いがあることは言うまでもなかろう。
北朝鮮をめぐる6か国協議でも、しばしば暗礁に乗り上げながら、米国は中国に議長役を任せっきりであった。その結果は北朝鮮に核と弾道ミサイル開発の時間を与えただけであったことが今や明確である。
中国と北朝鮮の関係を戦略的に考察することがなかった結果であり、そこには中国が何とかしてくれるという甘えと北朝鮮に対する認識不足があったからである。
今年4月初旬の米中首脳会議後、トランプ大統領は習主席を褒め称え、北朝鮮の制御は中国がやってくれるという意識からか、日米関係が薄らぐ状況さえ見られた。
すなわち、5月のイタリアにおけるG7サミット時の首脳会談では日本が抱える軍事上の制約に大統領はいらだちを見せたと言われ、7月のドイツでの20か国・地域(G20)首脳会議時は会談の開催すら危ぶまれた。
ところが、北朝鮮が7月初旬にICBMの発射試験に成功すると、大統領の意識に変化が見られるようになってきた。制裁が強化されているにもかかわらず、中朝間の貿易は増大し、北朝鮮が自粛に追い込まれる様相は一向に見えないからである。
さらに同下旬にICBMの発射試験を敢行すると、北朝鮮非難よりも「中国には非常に失望した」とトランプ大統領はツイッターに投稿して、中国の対北朝鮮政策に失望感を強めていったのだ。
こうして、北朝鮮が直接米本土に脅威をもたらす現状に直面したトランプ大統領は、7月末の日米首脳電話会談で「あなたが言った通りになった」と語りかけた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50918
(>>2以降に続く)
そこで、北朝鮮が国連の度重なる警告や制裁を無視して核弾頭の開発と弾道ミサイル発射を繰り返しても、大統領は当初「中国はよくやっている」と主席を褒め称えた。
しかし、国連の制裁が何度決議されても、一向に北朝鮮の抑制につながっていない。そのことから、米国は北朝鮮抑制で中国依存は間違いではないかと思うようになってきた。G7の後、安倍晋三首相の言っていたことが正しかったとさえ発言するようになる。
中国頼みが期待できないと観念した米国は、自らが主体的に関わる以外にないと思い始めた節がある。
7月28日付の「産経新聞」が報じた26日付ワシントン・タイムズとマイク・ポンペイCIA(米中央情報局)長官とのインタビュー記事からは北朝鮮のレジーム・チェンジが選択肢の1つと読み取れる。
産経新聞の古森義久氏も8月2日付JBpress記事「金正恩政権打倒の方法、米国政府が具体的に検討へ 一瞬も目を離せない段階に突入した北朝鮮情勢」で、長官が7月下旬のコロラド州アスペンで開かれた国際安全保障に関するフォーラムでの発言を引用して、同趣旨の記事を書いている。
中国依存は失敗の積み重ね
米国の中国依存(または行動容認)が失敗を重ねてきたことは歴史からも明らかである。第1次世界大戦後のワシントン条約体制は、西欧のベルサイユ体制に対応して、東アジア・太平洋地域で中国の民族自決や米国の門戸開放政策を進める新秩序を確立しようとしたものであった。
しかし、肝心の中国が一向に条約を遵守せず、また条約締結の旗振りをした米国は条約遵守の日本よりも中国(即ち蒋介石、次いで毛沢東)に言論と武器支援で肩入れし、日中戦争につなげていった。
米国の外交史家ジョージ・ケナンが「疑いもなく、極東の諸国民に対するわれわれの関係は、中国人に対するある種のセンチメンタリティ―によって影響されていた。(中略)中国人に対するわれわれの態度には何か贔屓客のような感じがある」(『アメリカ外交50年』)と述べる通りであった。
こうした結果、「他国(筆者注:共産主義と戦っていた日本)がそれを引き受けていた時には、われわれが大いに軽蔑した重荷を、いま自ら負う羽目になり苦しんでいるのは、確かに意地悪い天の配剤である」と述懐する。
ソ連を相手に冷戦時代を迎えたことを自虐的に反省する弁であるが、その延長線上に今日の中国との覇権争いがあることは言うまでもなかろう。
北朝鮮をめぐる6か国協議でも、しばしば暗礁に乗り上げながら、米国は中国に議長役を任せっきりであった。その結果は北朝鮮に核と弾道ミサイル開発の時間を与えただけであったことが今や明確である。
中国と北朝鮮の関係を戦略的に考察することがなかった結果であり、そこには中国が何とかしてくれるという甘えと北朝鮮に対する認識不足があったからである。
今年4月初旬の米中首脳会議後、トランプ大統領は習主席を褒め称え、北朝鮮の制御は中国がやってくれるという意識からか、日米関係が薄らぐ状況さえ見られた。
すなわち、5月のイタリアにおけるG7サミット時の首脳会談では日本が抱える軍事上の制約に大統領はいらだちを見せたと言われ、7月のドイツでの20か国・地域(G20)首脳会議時は会談の開催すら危ぶまれた。
ところが、北朝鮮が7月初旬にICBMの発射試験に成功すると、大統領の意識に変化が見られるようになってきた。制裁が強化されているにもかかわらず、中朝間の貿易は増大し、北朝鮮が自粛に追い込まれる様相は一向に見えないからである。
さらに同下旬にICBMの発射試験を敢行すると、北朝鮮非難よりも「中国には非常に失望した」とトランプ大統領はツイッターに投稿して、中国の対北朝鮮政策に失望感を強めていったのだ。
こうして、北朝鮮が直接米本土に脅威をもたらす現状に直面したトランプ大統領は、7月末の日米首脳電話会談で「あなたが言った通りになった」と語りかけた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50918
(>>2以降に続く)