韓国で23日、北朝鮮との有事に備える「民防空訓練」が全国一斉に行われた。韓国は昔から「ミンバンウィ(民防衛)」といって民間(一般国民)を対象にした有事訓練をやっているが、今回は北朝鮮をめぐる最近の軍事的緊張を背景に、ミサイルなど空襲に備える「防空訓練」となった。
このところ北朝鮮をめぐっては韓国より日本の方がはるかに緊張感が強い。その結果、日本人の韓国旅行がまた減るという反応まで起きている。そこで日本のテレビは待ってましたとばかり「防空訓練で緊張するソウル市民!」などと伝えたかもしれない。
防空訓練だからサイレンとともに市民はまず頑丈な建物や地下に退避し、通行車両はすべてその場で停車しなければならない。
ところがこれを守ったのは都心のごく一部で、他のところでは人も車も普段と変わらず平気で動いていた。緊張感のないことおびただしい。学校などは日本の防災訓練の方がはるかにまじめで真剣である。
これでは国民の無防備ぶりと安保意識の欠如を内外にさらすようなものでやらない方がよかったかも。古くからのコリア・ウオッチャーにはむしろイラ立ちだし、装甲車が走り回ったり軍服姿が街に立ったり国民も本気だった昔が懐かしい。
ところで筆者は本モノの空襲警報を経験したことがある。1983年8月7日の昼下がり。北からミグ戦闘機が韓国に侵入してきたため警戒警報が発令されたのだ。
突然、サイレンが鳴り、テレビ・ラジオは臨時放送で「ソウル、仁川、京畿一円で敵機が空襲中!」などとやった。本モノの空襲警報は朝鮮戦争(1950〜53年)以降これが初めてでその後もない。
実際は中国空軍の亡命機が領空侵入してきたものだったが、興奮(!)した当局者が放送で「これは訓練ではありません! 実際の警戒警報です!」と繰り返し叫びながら、勢い余って「敵が空襲中!」など誤報したほか「北のミグ戦闘機が21機も侵入してきた!」と誤解した市民もいたりで大騒ぎとなった。
日曜で自宅にいた筆者は一瞬、「朝鮮戦争の際の北朝鮮軍の侵攻は日曜だったな…」と思い出したが、記者としては何はともあれ確認しなければと、あちこち電話をかけているうちに警報解除になった。
この本モノの空襲警報の後、国民の反応を探ったところ実に興味深かった。母親たちはとっさに「避難!」と思って残りご飯を弁当に詰め、子供の服を着せ替え、後日の離散家族再会に備え子供の体の傷痕を確認し、本人も手持ちの貴金属をすべて身に着けたり…。もちろん当然ながらコメやラーメンを買いに走った人も。
北に近い田舎では、近所のおばあちゃんに「コンサンダン(共産党)がくるぞ! 早く家に帰れ!」とどなられた子供が、ワーワー泣きながら走って帰ってきたという話も聞いた。
これは当時すでに約30年たっていたが朝鮮戦争イメージである。その後さらに30年以上たっているので、国民の有事感からは朝鮮戦争型の「避難」という発想は確実に後退しているが。
今回の気の抜けたような民防空訓練の“チンタラ風景”は豊かになった韓国の北に対する余裕と自信の表れかもしれない。その自信と余裕で今や世界の厄介者になっている同族、同胞の北朝鮮を早く何とかしてほしい。
http://www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260019-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260019-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260019-n3.html
このところ北朝鮮をめぐっては韓国より日本の方がはるかに緊張感が強い。その結果、日本人の韓国旅行がまた減るという反応まで起きている。そこで日本のテレビは待ってましたとばかり「防空訓練で緊張するソウル市民!」などと伝えたかもしれない。
防空訓練だからサイレンとともに市民はまず頑丈な建物や地下に退避し、通行車両はすべてその場で停車しなければならない。
ところがこれを守ったのは都心のごく一部で、他のところでは人も車も普段と変わらず平気で動いていた。緊張感のないことおびただしい。学校などは日本の防災訓練の方がはるかにまじめで真剣である。
これでは国民の無防備ぶりと安保意識の欠如を内外にさらすようなものでやらない方がよかったかも。古くからのコリア・ウオッチャーにはむしろイラ立ちだし、装甲車が走り回ったり軍服姿が街に立ったり国民も本気だった昔が懐かしい。
ところで筆者は本モノの空襲警報を経験したことがある。1983年8月7日の昼下がり。北からミグ戦闘機が韓国に侵入してきたため警戒警報が発令されたのだ。
突然、サイレンが鳴り、テレビ・ラジオは臨時放送で「ソウル、仁川、京畿一円で敵機が空襲中!」などとやった。本モノの空襲警報は朝鮮戦争(1950〜53年)以降これが初めてでその後もない。
実際は中国空軍の亡命機が領空侵入してきたものだったが、興奮(!)した当局者が放送で「これは訓練ではありません! 実際の警戒警報です!」と繰り返し叫びながら、勢い余って「敵が空襲中!」など誤報したほか「北のミグ戦闘機が21機も侵入してきた!」と誤解した市民もいたりで大騒ぎとなった。
日曜で自宅にいた筆者は一瞬、「朝鮮戦争の際の北朝鮮軍の侵攻は日曜だったな…」と思い出したが、記者としては何はともあれ確認しなければと、あちこち電話をかけているうちに警報解除になった。
この本モノの空襲警報の後、国民の反応を探ったところ実に興味深かった。母親たちはとっさに「避難!」と思って残りご飯を弁当に詰め、子供の服を着せ替え、後日の離散家族再会に備え子供の体の傷痕を確認し、本人も手持ちの貴金属をすべて身に着けたり…。もちろん当然ながらコメやラーメンを買いに走った人も。
北に近い田舎では、近所のおばあちゃんに「コンサンダン(共産党)がくるぞ! 早く家に帰れ!」とどなられた子供が、ワーワー泣きながら走って帰ってきたという話も聞いた。
これは当時すでに約30年たっていたが朝鮮戦争イメージである。その後さらに30年以上たっているので、国民の有事感からは朝鮮戦争型の「避難」という発想は確実に後退しているが。
今回の気の抜けたような民防空訓練の“チンタラ風景”は豊かになった韓国の北に対する余裕と自信の表れかもしれない。その自信と余裕で今や世界の厄介者になっている同族、同胞の北朝鮮を早く何とかしてほしい。
http://www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260019-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260019-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260019-n3.html