8月14日に内閣府が発表した4-6月期GDP1次速報は、年率4.0%成長という堂々たる結果であった。これで日本経済は6四半期連続のプラス成長となり、中身的にも個人消費良し、設備投資良し、輸出だけがイマイチの「内需主導型成長」であった。
軍事的脅威にさらされる日本の円が「買い」なワケ
足元の名目GDPは545兆3522億円となった。「日本のGDPは約500兆円」と覚えている人が少なくないと思うが、すでに550兆円近くになっている点にご注意願いたい。
こんな実体経済の良いニュースにもかかわらず、マーケットの方は冴えない状態が続いている。日経平均株価は2万円割れ、為替も1ドル=110円割れの円高方向だ。その理由の一つが地政学リスク。ご案内の通り、米朝間で緊張が高まっているからだ。
米国のドナルド・トランプ大統領は、「北朝鮮は見たことがないような炎と憤激(Fire and Fury)に直面するだろう」とか、「軍事的解決に向けて準備は万端(Locked and Loaded)なり」などとキレッキレの恫喝を繰り返す。
北朝鮮側は、「それならばグアム島周辺に弾道ミサイル4発を撃ち込む」とやり返す。あまりにも粗野かつ野蛮な言葉の応酬だが、少なくとも冗談には聞こえない。かくして「有事の円買い」が起きているわけだ。
ところでこの理屈、多くの日本人にとっては異和感ありまくりであろう。北朝鮮がグアム島に向けてミサイルを発射すると、それは島根県、広島県、愛媛県、高知県の上空を飛ぶことになる。
そこで慌ててPAC3を当該4県に配備して、途中でミサイルが落ちてきたときの準備をしている。もちろん外れたときはゴメンナサイだが、政府としては「皆様の税金はこのように使われております!」というところを見せねばならない。普通だったら、こんな風に軍事的脅威にさらされている国の通貨は「売り」であろう。
ところが為替の世界では、有事になると円が買われる。なぜなら、「日本は巨額の対外資産を有している。国内で何か重大事件があれば、それを売ってくるだろう。すなわち外貨売り、円買いになる」という連想が働くからだ。
2016年末時点のわが国の純資産合計は349兆円 。世界最大の債権国である。海外の投資家たちは「日本はそのカネ、どうするつもりなの?」と冷ややかに見ているということだ。
思えばあの東日本大震災の時も、国土が津波と原子力災害に見舞われたというのに、為替は1ドル=80円前後の超円高局面だった。貿易収支も赤字に転じて、まさに「泣きっ面に蜂」であった。この国が有事に強いとはとても思えないのだが、「国難のときには漏れなく円高もついてくる」というのが悩ましいところである。
それではわれわれは、北朝鮮がもたらすリスクをどのように受け止めるべきなのか。真面目な話、ミサイルが日本国内に命中したら大変だけれども、よほど変な所に落ちない限り大事には至らないだろう。核兵器が搭載されていたら一大事だが、北朝鮮にはミサイルに乗せて運んで、確実に起爆させるまでの技術はまだないものと見られている。
怖いのは北朝鮮の本気ではなく、むしろ米国の本気
むしろ怖いのは、「北朝鮮の本気よりも米国の本気」である。すなわち本当の北朝鮮リスクとは、「米国がサージカルアタック(外科手術的攻撃)をやるかもしれない」ということなのではないか。
北朝鮮国内の核施設やミサイル基地を、ピンポイントで攻撃して壊滅させる、というミッションは、普通に考えれば極めて困難なはずである。なにしろ相当な数があるし、地下に造られた拠点も少なくないと聞く。
それに米軍が奇襲攻撃に踏み切った瞬間に、北朝鮮軍が通常兵器でソウルに向けて反撃を開始するかもしれない。いや、日本海に向けてノドンを撃ちまくる怖れだってある。とはいうものの、太平洋司令部や在韓米軍がサージカルアタックを検討していないはずがない。たぶん入念な戦争計画が立案済みであると考えるべきだろう。
軍人さんたちのリアリズムから言えば、「これから未来永劫、米国は北朝鮮の核という脅威と共存しなければならない」という事態は、何としても避けたいと考える。そこで軍事オプションを検討する。
http://toyokeizai.net/articles/-/185136
(>>2以降に続く)
軍事的脅威にさらされる日本の円が「買い」なワケ
足元の名目GDPは545兆3522億円となった。「日本のGDPは約500兆円」と覚えている人が少なくないと思うが、すでに550兆円近くになっている点にご注意願いたい。
こんな実体経済の良いニュースにもかかわらず、マーケットの方は冴えない状態が続いている。日経平均株価は2万円割れ、為替も1ドル=110円割れの円高方向だ。その理由の一つが地政学リスク。ご案内の通り、米朝間で緊張が高まっているからだ。
米国のドナルド・トランプ大統領は、「北朝鮮は見たことがないような炎と憤激(Fire and Fury)に直面するだろう」とか、「軍事的解決に向けて準備は万端(Locked and Loaded)なり」などとキレッキレの恫喝を繰り返す。
北朝鮮側は、「それならばグアム島周辺に弾道ミサイル4発を撃ち込む」とやり返す。あまりにも粗野かつ野蛮な言葉の応酬だが、少なくとも冗談には聞こえない。かくして「有事の円買い」が起きているわけだ。
ところでこの理屈、多くの日本人にとっては異和感ありまくりであろう。北朝鮮がグアム島に向けてミサイルを発射すると、それは島根県、広島県、愛媛県、高知県の上空を飛ぶことになる。
そこで慌ててPAC3を当該4県に配備して、途中でミサイルが落ちてきたときの準備をしている。もちろん外れたときはゴメンナサイだが、政府としては「皆様の税金はこのように使われております!」というところを見せねばならない。普通だったら、こんな風に軍事的脅威にさらされている国の通貨は「売り」であろう。
ところが為替の世界では、有事になると円が買われる。なぜなら、「日本は巨額の対外資産を有している。国内で何か重大事件があれば、それを売ってくるだろう。すなわち外貨売り、円買いになる」という連想が働くからだ。
2016年末時点のわが国の純資産合計は349兆円 。世界最大の債権国である。海外の投資家たちは「日本はそのカネ、どうするつもりなの?」と冷ややかに見ているということだ。
思えばあの東日本大震災の時も、国土が津波と原子力災害に見舞われたというのに、為替は1ドル=80円前後の超円高局面だった。貿易収支も赤字に転じて、まさに「泣きっ面に蜂」であった。この国が有事に強いとはとても思えないのだが、「国難のときには漏れなく円高もついてくる」というのが悩ましいところである。
それではわれわれは、北朝鮮がもたらすリスクをどのように受け止めるべきなのか。真面目な話、ミサイルが日本国内に命中したら大変だけれども、よほど変な所に落ちない限り大事には至らないだろう。核兵器が搭載されていたら一大事だが、北朝鮮にはミサイルに乗せて運んで、確実に起爆させるまでの技術はまだないものと見られている。
怖いのは北朝鮮の本気ではなく、むしろ米国の本気
むしろ怖いのは、「北朝鮮の本気よりも米国の本気」である。すなわち本当の北朝鮮リスクとは、「米国がサージカルアタック(外科手術的攻撃)をやるかもしれない」ということなのではないか。
北朝鮮国内の核施設やミサイル基地を、ピンポイントで攻撃して壊滅させる、というミッションは、普通に考えれば極めて困難なはずである。なにしろ相当な数があるし、地下に造られた拠点も少なくないと聞く。
それに米軍が奇襲攻撃に踏み切った瞬間に、北朝鮮軍が通常兵器でソウルに向けて反撃を開始するかもしれない。いや、日本海に向けてノドンを撃ちまくる怖れだってある。とはいうものの、太平洋司令部や在韓米軍がサージカルアタックを検討していないはずがない。たぶん入念な戦争計画が立案済みであると考えるべきだろう。
軍人さんたちのリアリズムから言えば、「これから未来永劫、米国は北朝鮮の核という脅威と共存しなければならない」という事態は、何としても避けたいと考える。そこで軍事オプションを検討する。
http://toyokeizai.net/articles/-/185136
(>>2以降に続く)