8月11日(金)の上海総合指数は1.6%安の急落となった。この日は前日終値比で0.7%安い水準で寄り付いている。上海総合指数にしては寄付きから大きなギャップが発生しているが、これは前日の大引け後から、この日の朝にかけて、何か大きな材料があったことを示している。
相場付きをみると、前場では大型株が大きく売られた。後場後半になると小型材料株も崩れ、ほぼ全面安の展開となった。
5月下旬を底として8月上旬にかけて、鉄鋼、石炭、非鉄金属、新素材を中核として、石油・鉱業開発、化学、港湾海運、一部のインフラ関連、銀行、証券、保険、飲料が支える形で上昇相場が形成されてきた。しかし、この日はこうした牽引役がすべて大きく売り込まれている。
一方、園区開発関連、国防軍事、医薬、農業、通信などの下げが比較的緩やかである。
下落の要因は何か? 普段は国際市場の影響を受けにくい中国本土市場だが、市場関係者、ファンドマネージャー、マスコミ報道などから判断する限り、今回は外部要因の影響が大きいようだ。
アジアを除く、主要国市場における前日の騰落率を示すと、ロンドンFTSE100指数は1.4%、ドイツDAX指数は1.1%、NYダウは0.9%、ナスダック総合指数は2.1%、それぞれ下落している。アジアの夜時間に取引のあった主要市場はアルゼンチンを除きすべて下落している。
グローバルで株価が下落しているわけだが、その要因は日本でも連日報道されている通り。アメリカと北朝鮮の間で緊張が高まったためである。
これまでの間、韓国市場は本土市場と共に、北朝鮮情勢にはほとんど反応してこなかった。それどころか、韓国総合指数は7月25日の場中で過去最高値2453.17ポイントを記録、昨年12月上旬をボトムに強い上昇トレンドを形成してきた。
それが11日には1.7%下落し2319.71ポイントで引けている。8日以来4日続落しており、相場は崩れている。
◆鉄鋼価格急騰の余波
中国市場に関しては、もう一つ大きな悪材料があった。それは当局が足元で上昇しているエネルギー、素材製品などの価格について、警戒感を強めつつあるのではないかといった懸念である。
中国鉄鋼工業協会は9日、鉄鋼メーカー、先物関係者、シンクタンクのアナリストなどを呼んで、鉄鋼関連先物価格、鉄鋼メーカー株価が異常変動している問題について研究分析している。その内容が11日朝、公開されている。
「足元における鋼材先物価格の大幅上昇は、市場の需要が引き上げているわけでも、供給が減少しているわけでもない。
一部の機関は生産能力削減、地条鋼(廃品鉄鋼製品を溶かして固めただけの粗悪な鉄鋼)製造の制限、環境保護監督検査、2+26都市大気汚染防治計画実施などを過度に解釈、あるいは誤解している。
特に、下半期は環境保護の影響で鉄鋼製品の供給力が大幅に減少し、鋼材価格は暴騰するといった極端な予想をしているところがある」などと指摘している。
中国鉄鋼工業協会が価格の沈静化を促して下がらなければ、国務院が直接、関与するであろう。鉄鋼で価格急騰が問題視されたということは、遅かれ早かれ、石炭でも、非鉄金属でも同じことが起こるだろう。相場付きは変わりそうである。
14日(月)の上海総合指数は、北朝鮮情勢に新たな変化がなかったこと、国際市場が安定したことなどから、一旦リバウンドし、0.9%上昇した。韓国総合指数も0.6%上昇と、弱いながらも持ち直している。
アメリカと北朝鮮が軍事衝突する可能性は依然としてわずかであろうが、韓国、中国の投資家が意識し始めたことが気にかかる。この問題が沈静化すれば、戻り歩調となるだろうが、事態は不可逆的に悪化しているような気がする。北朝鮮情勢の悪化を甘く見ない方がよさそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。
https://www.news-postseven.com/archives/20170816_605086.html
相場付きをみると、前場では大型株が大きく売られた。後場後半になると小型材料株も崩れ、ほぼ全面安の展開となった。
5月下旬を底として8月上旬にかけて、鉄鋼、石炭、非鉄金属、新素材を中核として、石油・鉱業開発、化学、港湾海運、一部のインフラ関連、銀行、証券、保険、飲料が支える形で上昇相場が形成されてきた。しかし、この日はこうした牽引役がすべて大きく売り込まれている。
一方、園区開発関連、国防軍事、医薬、農業、通信などの下げが比較的緩やかである。
下落の要因は何か? 普段は国際市場の影響を受けにくい中国本土市場だが、市場関係者、ファンドマネージャー、マスコミ報道などから判断する限り、今回は外部要因の影響が大きいようだ。
アジアを除く、主要国市場における前日の騰落率を示すと、ロンドンFTSE100指数は1.4%、ドイツDAX指数は1.1%、NYダウは0.9%、ナスダック総合指数は2.1%、それぞれ下落している。アジアの夜時間に取引のあった主要市場はアルゼンチンを除きすべて下落している。
グローバルで株価が下落しているわけだが、その要因は日本でも連日報道されている通り。アメリカと北朝鮮の間で緊張が高まったためである。
これまでの間、韓国市場は本土市場と共に、北朝鮮情勢にはほとんど反応してこなかった。それどころか、韓国総合指数は7月25日の場中で過去最高値2453.17ポイントを記録、昨年12月上旬をボトムに強い上昇トレンドを形成してきた。
それが11日には1.7%下落し2319.71ポイントで引けている。8日以来4日続落しており、相場は崩れている。
◆鉄鋼価格急騰の余波
中国市場に関しては、もう一つ大きな悪材料があった。それは当局が足元で上昇しているエネルギー、素材製品などの価格について、警戒感を強めつつあるのではないかといった懸念である。
中国鉄鋼工業協会は9日、鉄鋼メーカー、先物関係者、シンクタンクのアナリストなどを呼んで、鉄鋼関連先物価格、鉄鋼メーカー株価が異常変動している問題について研究分析している。その内容が11日朝、公開されている。
「足元における鋼材先物価格の大幅上昇は、市場の需要が引き上げているわけでも、供給が減少しているわけでもない。
一部の機関は生産能力削減、地条鋼(廃品鉄鋼製品を溶かして固めただけの粗悪な鉄鋼)製造の制限、環境保護監督検査、2+26都市大気汚染防治計画実施などを過度に解釈、あるいは誤解している。
特に、下半期は環境保護の影響で鉄鋼製品の供給力が大幅に減少し、鋼材価格は暴騰するといった極端な予想をしているところがある」などと指摘している。
中国鉄鋼工業協会が価格の沈静化を促して下がらなければ、国務院が直接、関与するであろう。鉄鋼で価格急騰が問題視されたということは、遅かれ早かれ、石炭でも、非鉄金属でも同じことが起こるだろう。相場付きは変わりそうである。
14日(月)の上海総合指数は、北朝鮮情勢に新たな変化がなかったこと、国際市場が安定したことなどから、一旦リバウンドし、0.9%上昇した。韓国総合指数も0.6%上昇と、弱いながらも持ち直している。
アメリカと北朝鮮が軍事衝突する可能性は依然としてわずかであろうが、韓国、中国の投資家が意識し始めたことが気にかかる。この問題が沈静化すれば、戻り歩調となるだろうが、事態は不可逆的に悪化しているような気がする。北朝鮮情勢の悪化を甘く見ない方がよさそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。
https://www.news-postseven.com/archives/20170816_605086.html