同性愛など性の多様性をもつ「LGBT」は、中国で5000万人前後にのぼるとされる。その中国で、「出櫃(チューグイ)」=カミングアウトは、常に大きなリスクをともなってきた。社会での理解が進んでいないうえ、政権は「秩序を乱す」として抑圧する構えをみせているためだ。
テレビ番組や映画に加え、ネット上でもLGBTを肯定する表現が禁じられ、人権抑圧の動きが強まっている。一方で、台湾では今年5月、「憲法裁判所」が同性婚を認めない現行法を違憲と判断。中国のLGBT社会からは、台湾をうらやむ声も漏れる。
家族総出で押さえつけ
「自分が同性愛者と気づいてから何年も悩み、すがる思いで打ち明けた母親は激しく取り乱し、家族総出で僕を押さえつけて精神疾患の病院に連れて行ったんだ」
上海市内で7月に開かれた「同性愛親友会」の集いで、29歳の中国人男性は、こう打ち明けた。「一人っ子の自分が子孫を残さなければ、一家の破滅だとののしられた」という。
中国で「出櫃」は大きなリスクをともなう。過去には、表面化しやすかった同性愛者の場合、1997年まで「流氓罪」という“ならず者”と同じ犯罪者と扱われ、2001年まで「精神疾患」として強制治療の対象にされた差別社会。いまも同性婚は認められず、LGBTへの理解も進んでいない。
中国では同性愛者やLGBTを「同志」とよぶ。かつて中国共産党の党員らが互いを呼び合う敬称として使った「同志」だが、台湾などで俗語として使われるうち、いつしか中国でも広がった。
台湾では5月、憲法裁判所に当たる司法院大法官会議が、同性婚を認めない現行民法は「違憲」に当たるとの判断を示し、2年以内の法改正か関連法制定を求めた。今後、アジアで初めて同性婚の合法化が台湾で実現する見通し。
台湾がより優れている
台湾の動きとは逆に、中国ではLGBTへの締め付けが進行中だ。中国政府は昨年3月、テレビ番組でのLGBT描写を禁じ、「同志」への検閲を強め始めている。映画にも検閲が広がり、さらに今年6月にはネット視聴のソフトでも同性愛などの自由な表現を禁じる「ネット視聴コンテンツ審査規則」が通過した。
最高指導部のトップ人事が決まる5年に1度の共産党大会を今秋に控え、社会混乱のタネを減らしたい習近平指導部は、「LGBTは社会秩序を乱す」などと曲解して圧力を強めるもよう。偏見に満ちた人権軽視は、今秋に共産党大会を控え一段と厳しさを増している。
「出会いの場」強制撤去
「私は初めて、台湾が中国より優れているのだと実感した」
「ここでは、こんなにスモッグがかかっている。どうやって『虹』(LGBTの象徴)がみえるっていうのかい?」
5月の台湾での司法判断後、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では、台湾に羨望の視線を向ける中国LGBT社会からのツイートがあふれた。そんな声を伝えたUSニュース・アンド・ワールド・リポート誌(7月5日、電子版)によると、司法判断から数日後、中国本土でLGBT関連のサイトが突然、閉鎖されたという。
上海市中心部の人民公園で5月、露天商の無許可営業や違法駐車などを取り締まる「城管」と呼ばれる治安要員の怒号が響いた。同性愛者を息子や娘にもつ数十人の母親らが、レインボーカラーに塗り分けられた傘を地面に置き、子供の経歴書や写真を見せ合って「お見合い相手」を探していたときのことだ。
人民公園は一人っ子の結婚相手を探す両親や祖父母が集まる“メッカ”。週末ともなれば早朝から数千人が、子供の対象になりそうな相手の学歴や職業、容姿などの釣書(縁談向けの身上書)を見比べ、その家族とお見合いの交渉まで行う。
悪名高い「一人っ子政策」は昨年、ようやく廃止されたが、20〜30代の結婚適齢期にある男女は都市部ではほぼ例外なく「一人っ子」。子孫繁栄と老後を頼るためにも、祖父母や両親は「結婚しない」現代っ子に焦りを感じている。
http://www.sankei.com/premium/news/170808/prm1708080005-n1.html
(>>2以降に続く)
テレビ番組や映画に加え、ネット上でもLGBTを肯定する表現が禁じられ、人権抑圧の動きが強まっている。一方で、台湾では今年5月、「憲法裁判所」が同性婚を認めない現行法を違憲と判断。中国のLGBT社会からは、台湾をうらやむ声も漏れる。
家族総出で押さえつけ
「自分が同性愛者と気づいてから何年も悩み、すがる思いで打ち明けた母親は激しく取り乱し、家族総出で僕を押さえつけて精神疾患の病院に連れて行ったんだ」
上海市内で7月に開かれた「同性愛親友会」の集いで、29歳の中国人男性は、こう打ち明けた。「一人っ子の自分が子孫を残さなければ、一家の破滅だとののしられた」という。
中国で「出櫃」は大きなリスクをともなう。過去には、表面化しやすかった同性愛者の場合、1997年まで「流氓罪」という“ならず者”と同じ犯罪者と扱われ、2001年まで「精神疾患」として強制治療の対象にされた差別社会。いまも同性婚は認められず、LGBTへの理解も進んでいない。
中国では同性愛者やLGBTを「同志」とよぶ。かつて中国共産党の党員らが互いを呼び合う敬称として使った「同志」だが、台湾などで俗語として使われるうち、いつしか中国でも広がった。
台湾では5月、憲法裁判所に当たる司法院大法官会議が、同性婚を認めない現行民法は「違憲」に当たるとの判断を示し、2年以内の法改正か関連法制定を求めた。今後、アジアで初めて同性婚の合法化が台湾で実現する見通し。
台湾がより優れている
台湾の動きとは逆に、中国ではLGBTへの締め付けが進行中だ。中国政府は昨年3月、テレビ番組でのLGBT描写を禁じ、「同志」への検閲を強め始めている。映画にも検閲が広がり、さらに今年6月にはネット視聴のソフトでも同性愛などの自由な表現を禁じる「ネット視聴コンテンツ審査規則」が通過した。
最高指導部のトップ人事が決まる5年に1度の共産党大会を今秋に控え、社会混乱のタネを減らしたい習近平指導部は、「LGBTは社会秩序を乱す」などと曲解して圧力を強めるもよう。偏見に満ちた人権軽視は、今秋に共産党大会を控え一段と厳しさを増している。
「出会いの場」強制撤去
「私は初めて、台湾が中国より優れているのだと実感した」
「ここでは、こんなにスモッグがかかっている。どうやって『虹』(LGBTの象徴)がみえるっていうのかい?」
5月の台湾での司法判断後、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では、台湾に羨望の視線を向ける中国LGBT社会からのツイートがあふれた。そんな声を伝えたUSニュース・アンド・ワールド・リポート誌(7月5日、電子版)によると、司法判断から数日後、中国本土でLGBT関連のサイトが突然、閉鎖されたという。
上海市中心部の人民公園で5月、露天商の無許可営業や違法駐車などを取り締まる「城管」と呼ばれる治安要員の怒号が響いた。同性愛者を息子や娘にもつ数十人の母親らが、レインボーカラーに塗り分けられた傘を地面に置き、子供の経歴書や写真を見せ合って「お見合い相手」を探していたときのことだ。
人民公園は一人っ子の結婚相手を探す両親や祖父母が集まる“メッカ”。週末ともなれば早朝から数千人が、子供の対象になりそうな相手の学歴や職業、容姿などの釣書(縁談向けの身上書)を見比べ、その家族とお見合いの交渉まで行う。
悪名高い「一人っ子政策」は昨年、ようやく廃止されたが、20〜30代の結婚適齢期にある男女は都市部ではほぼ例外なく「一人っ子」。子孫繁栄と老後を頼るためにも、祖父母や両親は「結婚しない」現代っ子に焦りを感じている。
http://www.sankei.com/premium/news/170808/prm1708080005-n1.html
(>>2以降に続く)