久しぶりに中国らしい話題がニュースを賑わしている。いったい何かといえばニセモノの学位についてのニュースだ。
といっても一昔前の話題のように、国内の有名大学の卒業証書が道端で簡単に手に入るといったテーマではない。海外の大学の卒業証明書を偽造するというビジネスの話題である。
すでに中国では、海外留学をした学生は珍しくなく、その経歴が就職に有利に働く時代は終わったとされている。
いわゆる帰国生を意味する“海亀”(海外から帰る「帰」の発音と「亀」が同じことからこう呼ばれる)の受難がいわれて久しいのだが、そうした社会の価値観の変化を受けてか、最近では海外に行かないで「学歴」だけを手にしようとする人が増えている。
それを手助けするコンサルタント会社が、まるで雨後の筍のようにあって社会問題化しているというのである。
もともと中国では留学生が海外で得た学位に対する疑惑の目が向けられてきて、実際に教育の出先機関の留学服務センターには「国外学歴学位認証システム」というものが設置されてきていた。
企業によってはこの認証がない学位や学歴を信用しないというところもあり、一定の役割を果たしてきた。
だが、このシステムを利用しても世界中のすべての大学との間で即時に認証がかなうかといえば決してそうではない。まだ多くの大学が認証の対象外となっているのが現実である。
こうしたシステムの隙間につけ込んでなんとも怪しげなビジネスを行っているのが「〇〇国外学位学歴認証センター」とか「〇〇国外学位学歴認証諮詢」といった社名でインターネットの中に広告を出している企業なのだという。
試みにネットで検索してみても驚くほどたくさんヒットするのである。
こうした企業に共通しているのは、金額はたいてい10万元(約165万円)程度。海外の学位や学歴を用意してくれるのは当たり前として、そのほか企業や学校が不審に思って検索をかけても、大丈夫なように体裁を整えてくれるというサービスをうたっている点だ。
なかには、どうやってするのか分からないが、出入国記録の証明までを用意するというサービスを大きく宣伝している会社もあった。
興味深かったのは国内のメディアが実際にこの企業を利用した学生らをインタビューする中で、多くの人がすでにこのニセの証明書を利用して就職を決めていたことだ。
この現実に対し、国内のメディアは「内外の企業が結託して詐欺ビジネスを行っているのではないか」との結論を導き出していた。
かつての日本にも海外の怪しい学歴が問題化したことがあったが、こんな学歴に騙される企業も企業ではないだろうか。
■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170726/soc1707260010-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170726/soc1707260010-n2.html
中国では、海外の大学の卒業証明書を偽造するビジネスが横行している(ロイター)
といっても一昔前の話題のように、国内の有名大学の卒業証書が道端で簡単に手に入るといったテーマではない。海外の大学の卒業証明書を偽造するというビジネスの話題である。
すでに中国では、海外留学をした学生は珍しくなく、その経歴が就職に有利に働く時代は終わったとされている。
いわゆる帰国生を意味する“海亀”(海外から帰る「帰」の発音と「亀」が同じことからこう呼ばれる)の受難がいわれて久しいのだが、そうした社会の価値観の変化を受けてか、最近では海外に行かないで「学歴」だけを手にしようとする人が増えている。
それを手助けするコンサルタント会社が、まるで雨後の筍のようにあって社会問題化しているというのである。
もともと中国では留学生が海外で得た学位に対する疑惑の目が向けられてきて、実際に教育の出先機関の留学服務センターには「国外学歴学位認証システム」というものが設置されてきていた。
企業によってはこの認証がない学位や学歴を信用しないというところもあり、一定の役割を果たしてきた。
だが、このシステムを利用しても世界中のすべての大学との間で即時に認証がかなうかといえば決してそうではない。まだ多くの大学が認証の対象外となっているのが現実である。
こうしたシステムの隙間につけ込んでなんとも怪しげなビジネスを行っているのが「〇〇国外学位学歴認証センター」とか「〇〇国外学位学歴認証諮詢」といった社名でインターネットの中に広告を出している企業なのだという。
試みにネットで検索してみても驚くほどたくさんヒットするのである。
こうした企業に共通しているのは、金額はたいてい10万元(約165万円)程度。海外の学位や学歴を用意してくれるのは当たり前として、そのほか企業や学校が不審に思って検索をかけても、大丈夫なように体裁を整えてくれるというサービスをうたっている点だ。
なかには、どうやってするのか分からないが、出入国記録の証明までを用意するというサービスを大きく宣伝している会社もあった。
興味深かったのは国内のメディアが実際にこの企業を利用した学生らをインタビューする中で、多くの人がすでにこのニセの証明書を利用して就職を決めていたことだ。
この現実に対し、国内のメディアは「内外の企業が結託して詐欺ビジネスを行っているのではないか」との結論を導き出していた。
かつての日本にも海外の怪しい学歴が問題化したことがあったが、こんな学歴に騙される企業も企業ではないだろうか。
■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170726/soc1707260010-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170726/soc1707260010-n2.html
中国では、海外の大学の卒業証明書を偽造するビジネスが横行している(ロイター)