だが、提訴して完全勝訴したフィリピンでは、公式行事は行われなかった。裁定の「棚上げ」に応じたドゥテルテ政権が、中国に“配慮”しているためだ。一方、中国は南シナ海の軍事拠点化を着々と進めており、専門家らは危機感を強めている。
フィリピン政府は12日、仲裁裁定1年の声明を出し、大統領が地域の平和と安定を重視して「健全な対話環境」を導いた、と主張した。
ドゥテルテ氏の外交姿勢により、経済的な利益がもたらされたとも強調。裁定「棚上げ」の見返りに中国から得た、巨額支援を意味するのは明白だ。
フィリピンは、排他的経済水域(EEZ)内のスカボロー礁(中国名・黄岩島)が2012年に中国に実効支配されたことを受け、南シナ海での中国の主権主張は国際法に反すると、13年に提訴した。
中国が南シナ海のほぼ全域で歴史的な管轄権を主張する根拠としている「九段線」も否定する裁定が下り、国中が歓喜に包まれた。
だが、裁定には強制力はない。国際社会の包囲網が狭まるなか、中国は巻き返しの攻勢を強化。ドゥテルテ氏は昨年10月に訪中して習近平国家主席と初会談し、南シナ海問題の二国間協議解決に路線転換した。
マニラでは12日、討論会が開かれ、ドゥテルテ氏の対中融和を疑問視する声があがった。
前アキノ政権で仲裁裁判を主導し、この会議を主催したデルロサリオ前外相は、「中国は友好姿勢を強める半面、南シナ海の軍事拠点化をやめようとしない」と指摘。
最高裁のカルピオ判事は、中国がスカボロー礁へ施設を設置する動きに、ドゥテルテ氏が「止められない」と述べたことなどを問題視した。
会議には、相航一・日本国際問題研究所所長代行 も参加し、日比両国は、ともに海洋国家で法の支配を重視していると指摘。「国際社会は、仲裁裁定の順守を求めている」と訴えた。
http://www.sankei.com/world/news/170712/wor1707120043-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170712/wor1707120043-n2.html
![【緊迫・南シナ海】仲裁裁定から1年 フィリピンの配慮につけ込む中国 「棚上げ」で軍事拠点着々[7/12] [無断転載禁止]©2ch.net ->画像>2枚](http://www.sankei.com/images/news/170712/wor1707120043-p1.jpg)
中国が人工島を造成した南シナ海のスービ礁=2016年11月撮影(デジタルグローブ・ゲッティ=共同)