【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権がまたも弾道ミサイルを発射した。トランプ米政権の圧力に屈せず、核・ミサイル開発に邁進(まいしん)する姿勢を行動で示した形だ。飛距離を制限したミサイルの試射では、トランプ政権が軍事行動に出ることはない−との一種の“侮り”も浮かぶ。
今回のミサイル発射は、米軍横須賀基地を拠点とする原子力空母ロナルド・レーガンが朝鮮半島付近に向かっていると報じられる中で強行された。
朝鮮半島近海に展開中の別の空母カール・ビンソンと合流し、合同演習を行うとも伝えられ、この間、2つの空母打撃群が北朝鮮ににらみを利かせることになる。トランプ政権にとっては、この上ない対北抑止となるはずだった。
北朝鮮メディアは、米空母の展開に繰り返し強い反発を示してきた。ここでミサイル発射を押しとどめれば、圧力に屈したとの印象を与えかねない。逆にこのタイミングで発射すれば、国威発揚につなげられる。
北朝鮮高官らは、海外メディアに「計画に基づき、毎週でも発射実験を行う」と強調してきたが、それを“有言実行”した形だ。ちょうど1週間前には、中長距離と称する弾道ミサイル「火星12」を高度2千キロ超にまで打ち上げていた。
北朝鮮との「対話」に意欲を示す文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓国に誕生したことも大きい。
文大統領は、火星12の発射を強く非難しながらも「北との対話の可能性を開いているが…」とわざわざ対話に含みを持たせた。「圧力」や「制裁」を打ち出すこともなかった。米国に特使を派遣し、トランプ大統領から「条件が整えば、平和の醸成に関与する意向がある」との文言を引き出している。
対北包容政策を貫いた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権同様、米国の圧力に対する“防波堤”になってくれると、金正恩政権が期待をかけても不自然ではない。
北東部の豊渓里(プンゲリ)の核実験場でも「いつでも6回目の核実験が行える状態を維持している」(韓国政府関係者)という。
ただ、核実験をすれば、中国も原油の輸出停止を含む強硬措置に出るとみられ、核実験に踏み切るかがターニングポイントとなるとみられる。
一方で、弾道ミサイル発射に対し、国際社会が従前通りの対応にとどまっていれば、北朝鮮が発射実験を繰り返し、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成に向け技術を高めるだけなのも確かだ。
■「2週連続」、政府警戒 夕方発射にも注目
日本政府は21日、北朝鮮が2週連続で弾道ミサイルを発射したことに警戒を強めている。安倍晋三首相は26、27両日にイタリア・タオルミナで開かれる先進7カ国(G7)首脳会議で北朝鮮問題を主要議題として取り上げ、国際社会と協調して北朝鮮に対する圧力を一層強めたい考えだ。
首相は21日夜、首相官邸で開いた国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合後、「G7において明確なメッセージを発出したい」と記者団に語った。欧州の参加国に北朝鮮のミサイル技術が向上し脅威が高まっている現状を説明し、問題意識と圧力の必要性の共有を図る考えだ。
また、首相は「米国、韓国、中国、ロシアとも結束しながら、国際社会と連携して毅然(きぜん)とした対応を取っていく」と強調した。
岸田文雄外相も、外務省で記者団に「さらなる圧力が必要だということを改めて強く感じる」と述べた。
外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は21日夜、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表、韓国外務省の金ホン均・朝鮮半島平和交渉本部長と相次ぎ電話で会談し、日米韓3カ国が連携して北朝鮮に圧力をかける方針を確認した。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170522/frn1705221100009-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170522/frn1705221100009-n2.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170522/frn1705221100009-n3.htm
(>>2以降に続く)
北朝鮮が2月に発射した中距離弾道ミサイル「北極星2」(朝鮮通信=共同)
今回のミサイル発射は、米軍横須賀基地を拠点とする原子力空母ロナルド・レーガンが朝鮮半島付近に向かっていると報じられる中で強行された。
朝鮮半島近海に展開中の別の空母カール・ビンソンと合流し、合同演習を行うとも伝えられ、この間、2つの空母打撃群が北朝鮮ににらみを利かせることになる。トランプ政権にとっては、この上ない対北抑止となるはずだった。
北朝鮮メディアは、米空母の展開に繰り返し強い反発を示してきた。ここでミサイル発射を押しとどめれば、圧力に屈したとの印象を与えかねない。逆にこのタイミングで発射すれば、国威発揚につなげられる。
北朝鮮高官らは、海外メディアに「計画に基づき、毎週でも発射実験を行う」と強調してきたが、それを“有言実行”した形だ。ちょうど1週間前には、中長距離と称する弾道ミサイル「火星12」を高度2千キロ超にまで打ち上げていた。
北朝鮮との「対話」に意欲を示す文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓国に誕生したことも大きい。
文大統領は、火星12の発射を強く非難しながらも「北との対話の可能性を開いているが…」とわざわざ対話に含みを持たせた。「圧力」や「制裁」を打ち出すこともなかった。米国に特使を派遣し、トランプ大統領から「条件が整えば、平和の醸成に関与する意向がある」との文言を引き出している。
対北包容政策を貫いた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権同様、米国の圧力に対する“防波堤”になってくれると、金正恩政権が期待をかけても不自然ではない。
北東部の豊渓里(プンゲリ)の核実験場でも「いつでも6回目の核実験が行える状態を維持している」(韓国政府関係者)という。
ただ、核実験をすれば、中国も原油の輸出停止を含む強硬措置に出るとみられ、核実験に踏み切るかがターニングポイントとなるとみられる。
一方で、弾道ミサイル発射に対し、国際社会が従前通りの対応にとどまっていれば、北朝鮮が発射実験を繰り返し、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成に向け技術を高めるだけなのも確かだ。
■「2週連続」、政府警戒 夕方発射にも注目
日本政府は21日、北朝鮮が2週連続で弾道ミサイルを発射したことに警戒を強めている。安倍晋三首相は26、27両日にイタリア・タオルミナで開かれる先進7カ国(G7)首脳会議で北朝鮮問題を主要議題として取り上げ、国際社会と協調して北朝鮮に対する圧力を一層強めたい考えだ。
首相は21日夜、首相官邸で開いた国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合後、「G7において明確なメッセージを発出したい」と記者団に語った。欧州の参加国に北朝鮮のミサイル技術が向上し脅威が高まっている現状を説明し、問題意識と圧力の必要性の共有を図る考えだ。
また、首相は「米国、韓国、中国、ロシアとも結束しながら、国際社会と連携して毅然(きぜん)とした対応を取っていく」と強調した。
岸田文雄外相も、外務省で記者団に「さらなる圧力が必要だということを改めて強く感じる」と述べた。
外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は21日夜、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表、韓国外務省の金ホン均・朝鮮半島平和交渉本部長と相次ぎ電話で会談し、日米韓3カ国が連携して北朝鮮に圧力をかける方針を確認した。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170522/frn1705221100009-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170522/frn1705221100009-n2.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170522/frn1705221100009-n3.htm
(>>2以降に続く)
北朝鮮が2月に発射した中距離弾道ミサイル「北極星2」(朝鮮通信=共同)