【No Ball、No Life】「他に娯楽がないんでしょ」
サッカー専門誌の編集者だった1990年代に先輩から言われた言葉である。
これは、「なぜ浦和レッズは成績に関係なくお客さんが入るのか?」という問いかけに対する答えのひとつだった。
旧大宮市で育った私としては、「ああ、そうか」とものすごくスムーズに受け入れられる回答だった。
高校サッカーにおいて埼玉県代表は全国屈指の力を持ち、大宮サッカー場(現NACK5スタジアム大宮)で行われる県予選、冬の選手権に対する関心度が高く、お客さんの入りは当時からよかった。
人気カードになるとゴール裏に人があふれ、急きょスタンド前に“砂かぶり席”が設けられたときもあった。
(中略)
勝負の世界には勝ち負けがある。サッカーは感情を大きく揺さぶられるスポーツで、だからこそ世界一の人気を誇る。
一方で、負けを受け入れられない弱いメンタルを持つサポーターがいて、数々の問題が起きてきた。
ひとつ思うのは、敗戦濃厚となったら途中帰宅してもいいのに…ということだ。実際、欧州ではそうしたシーンが通常となっている。
あえて最後まで観戦してストレスを最高潮までため、感情を抑えられずにモノや他人に当たるのは愚の骨頂である。
「挑発された」という言い訳は、いつかの済州ユナイテッドと同じである。多くのサポーターは敗戦にも乱されない強いメンタルを持って観戦している。
推しが思うような結果を得られなくても、うまく気持ちを切り替えてまた明日を迎えている。
「お金を払ってる」「アウェーまで来てる」。どちらも義務ではなく、自分で選択して取っている行動である。
地元を離れたのでわからないが、以前と違っていまは娯楽も多いはず。浦和レッズの他にも気持ちを入れ込めるものがあれば、平穏に、心を乱されることなく応援できるはず。
繰り返しになるが、自分の気持ちをうまく抑えられないサポーターは、チケット代を払っているので難しいかもしれないが、イライラしてきたら、ヤバイと感じてきたら、スタジアムを後にすることをおススメする。クラブや選手にはそれで十分に気持ちが伝わる。
そうではない者たち。日ごろの鬱憤を晴らすべく、暴れるタイミングを狙っている確信犯がいるとしたら、それはクラブ主導、Jリーグ主導でスタジアムから去ってもらったほうがいい。
安全を確保するためにも追放でいい。その際は、行動履歴などが判断材料になる。
スタジアムにおける主役は誰なのか? 揺らぐことなく、選手である。時間とお金を費やし、人生のすべてをかけてクラブを支えている自分だ。ふがいない敗戦には時と場所を選ばずに意見するのが当たり前。
他人に挑発されたら実力行使に出てもいい。ときにはルールを破っても仕方ない。自分の言動で必ずクラブが強くなる。スタジアムでは自己主張させてもらう。そう考えている方は、一度立ち止まってほしい。
いまの時代、モノに当たらず、他人に迷惑をかけなくて済む自分に合った娯楽が他にも見つかるはずである。(フリーランスライター・飯塚健司)
8/8(火) 15:00配信 サンスポ
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