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2022/10/17(月) 23:40:47.29ID:IX3MZMux目指すはアイドルの美貌、行き過ぎた「顔、スタイル重視」の風潮
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
整形の話を学生から振られてしまった。久々の硬直感であった。どう反応してよいのかわからないでいると、学生たちはそんな私の心境などにまったく構うことなく、目や鼻の整形計画についてワイワイと盛り上がっていた。
ここは女子大である。セクハラらしきことは禁物だ。
韓国では政治家を含めた有名人のセクハラや性犯罪があとを絶たないので、セクハラ防止がまるで一大キャンペーンのように官民一体となって叫ばれている。私も所属する大学の指示で、政府関連機関が製作したセクハラ防止教育動画を見させられた。若い学生と接する立場だからこんな動画を見させられるのかと思っていたが、日本人駐在員も視聴するように指導があるのだとか。
なので自分から顔や体形の話を学生相手にすることはないし、そもそも、普段の大学教育の場で、そんな話をしようなどとも思わない。ところが、学生はそうした感覚ではないのだ。
●なぜ彼女たちは整形をしたがるのか
それは1年生の日本語の授業だった。基礎文法の学習がそれなりに進んで、日本語で自由に会話させていた。あるグループの会話に混ざろうとして「どんな話をしていたの?」と尋ねたら、「整形の話をしていたんです」と元気な声で返事してくれた。
整形の話を振られたのはこれが初めてではない。ただ、コロナ禍で対面授業がおよそ2年にわたり事実上行われてこなかったせいで、そんな話はずいぶんご無沙汰だった。そのせいもあり、すっかり戸惑ってしまった。免疫力が落ちてしまったのだ。
話を止めさせるのも不自然だし、本人たちは自分の次の整形プランについて、私がいても当たり前のように私に話している。50代のオヤジを前にしていても、まったく抵抗感のない話題らしい。
「え、整形の話、みんなでけっこうするの?」と、私は何とか質問を絞り出した。いや、正直なところいろいろ聞いてみたいのだが、深入りは禁物なので言葉を選んだと言った方が正しい。
「はい、そうですよ。いつもというわけではないですけど、よくします」
「え、それじゃあ、化粧品の話をするような感覚なの?」とまた質問してみた。
「化粧品とはやっぱり違いますよね。どっちも綺麗になるというのでは同じですけど、整形をするのならプランニングが必要なので。お金もかかりますよね」と、今度は別の学生が答えてくれた。
日本でも報じられているが、韓国ではこの5年ほどの間に「男女平等」がそれこそ国家プロジェクトのように推進されてきた。
とりわけ前政権の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は男女平等の実現を強く意識しているような言動をしていた。2021年5月の訪米の際に行われたバイデン大統領との記者会見では、「韓国側には女性記者はいないのですか」と発言している。
だがこの発言は、現地メディアに違和感をもって受け止められた。というのは、アメリカでは性別に言及するのは稀である上に、女性を優遇していると受け止められたからだ。つまり、韓国が実現しようとする男女平等は、アメリカでは差別になってしまうのだ。それだけ韓国社会はこれまで「アメリカ式の男女平等」からほど遠かったということなのだろう。
またアメリカと韓国の違いとして、アメリカでは公の場では性差の意識は封印されるべきとされているが、韓国では公の場で性差が強く意識される。なぜなら、韓国社会ではあらゆる場面で、「男性らしく美しい男性」「女性らしく美しい女性」が理想と考えられているからだ。そうした性差を強調した男性と女性が社会生活で、たとえば就職の機会や報酬面で平等に扱われるべきだというのが、「韓国式の男女平等」である。
その意味では、日本で整形手術を受ける理由としてよく挙げられる「コンプレックスの克服」とは、だいぶ異なっている。目指す美貌が設定されているのだ。学生たちが「プランニングする」と言っていたのも、そういった意味なのだ。
プランニングがあるということは、目標がある。その1つとして、「就職」が挙げられる。そのため、「就職成形」という言葉もある。
計画的に早いうちから施術を受ける女性もいる。「10代成形」という言葉まであるほどで、中学生も整形手術を受けている。(省略…)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72252